2012年8月10日金曜日

【クロカン道場】 荷重移動で走破する


「荷重移動で走る」といきなり言われてもピンとこない人が多いかもしれない。

というのも、最近の良く出来た車では、荷重移動が不要・・・とは言いませんが、それほど荷重移動をわざわざ起こす必要のない車が多いからだ。


僕が知る限り、ランクルのような重量車でこの技を積極的に使おうとしている人はあまり見たことがない。



荷重移動というと、ジムニーのSJ30に乗っている人が多く使っているのを見ます。


ジムニー、それも軽量なモデルでは、僕ら重量車では存在しない「空中ライン」というものが存在する。


ランクルなどで言う「空中ライン」というのはタイヤを一本だけ高々と浮かせて通過させるラインのことを言うのだが、

SJ30が得意としている空中ラインとはく、車全体が空を飛び通過してくるラインだ(笑)。



あんな走り方をしても、なかなか壊れないんだからサンマルすげぇよなぁと思うことも多いのだが、

車を空に飛ばす際に、段差に当てる直前にブレーキで荷重をフロントに移動させ、その反動を利用して車を真上に飛ばすような乗り方を特にトライアルの改造クラスではよく見ると思う。



ランクルという重量車ではさすがにそんなことはあまりしない方がいいのだが、サンマルや改造クラスのソレも「荷重移動」で車を飛ばしているし、

僕がこれから伝えようとしている技も、荷重移動を利用して車を前進させる技です。



先日のブログで、思った以上に「揺り返し」についての反響が多かったので、今回はその補足なのですが、ランクルやディーゼルジープなど重量車で使う荷重移動というのは、その揺り返しを使う技の一種類です。



■揺り返しでの荷重移動とは


最初に僕が「荷重移動」に気がつき始めたのは、20年近く前の雪中行軍をしていたときだった。


それまでは、勢いをつけてドカンとブチ当たって、またバックして勢いよくブチ当たって・・・というようなアタックを繰り返していたのだが、

ある日、後続車を先に進ませようと道の端にジワジワと寄った際に、ほんの少し車を進ませると、タイヤが軽く雪を踏み固めて乗り上げるような形になり、クラッチを切るとスッと後ろに下がることがあった。

タイヤは小さな穴ボコに落ちるのだが、反動でまた前進するので、その反動に合わせ、軽くクラッチをつなげると、また少しだけ雪を踏み固めて乗り上げ、タイヤが高いところに登る・・という動作を繰り返すということに気がついた。



外からその操作を見ていると、振り子みたいに車を前後に揺らしながら、20cm程度ずつ雪を押しのけて進んでいるように見えるのだが、

その時、振り子のような荷重移動をすることで車は少しのトラクションだけでも効率よく前進してくれるのだということに気がついた。



「どういうことだ?」と思う方は、ブランコを想像してもらいたい。




最初は小さな反復なのだが、すこしずつブリをつけることで少しずつ大きな反復運動になり、最終的にはものすごく大きな反復になる。

ちょうどソレを同じようなことを、少しくぼんだ地形や、斜面などにタイヤを押し当てることで作り出すわけだ。


■ランクル乗りで反復運動(揺り返し)がメジャーでない理由とは?


これは単純に「使う必要がないから」だと思う。

というのも、僕が乗っている車はギア比が高めで、しかもエンジンの粘りのないことで有名なPZJ70。

もし、これで他の70系と同じようにエンジンを粘らせてクローリングしようとすると、ギア比を含め大改造しなければならなくなる。


例えば1HZ搭載車などでいうと、ひたすら粘らせクローリングだけで段差を乗り越えていけたりするので、わざわざ前後に揺すって、反動をつけてポンと段差や溝を超えなくても、アイドリングだけで通過出来たりするわけだ(笑)


同じことを僕のP幌でやろうとすると、当然エンストしそうになるので、クラッチを切ると後ろに下がるのだが、反動をつけてまたその段差などに当てると、今度は軽く乗り越えられたりする。

だから、実際、僕が這っているところを見てもらえればわかるのだが、本当にしょっちゅうこの技は使っている。


僕が「揺り返し」という荷重移動の技を身につけたのは、ギア比が高く、エンジンの粘りがランクルの中では比較的悪かったPZJ70に乗っていたから、ということが言えるのかもしれません。



■お金がないからこそ成功する


これは、ウェブマーケティングの世界でもよく言われていることなのだが、なまじっか恵まれた環境にいると、世間の動きに取り残されてしまうことが多い。

例えば、資金力が潤沢ではない人は「どうにかして無料で集客する方法はないか?」とか、「なんとか費用対効果を最大にできないか?」と頭を振り絞って対策を講じたりするものだが、

なんとなく利益が出ている人はそういう努力を怠ったりする場合が多い。



自分の状況で当てはめてみても、「お金がないからこそ、今の条件でなんとか最善の走らせ方が出来ないものか?」と考え抜いたからこそ、あのような走り方(這わせ方)にたどり着いたわけで、

お金がかけられなかったというのも、悪いことばかりではないんだな、とつくづく思いました。



ショップを運営している人や、四駆業界全体のことからしてみれば、「余計な話しやがって」と思われるかもしれないが、

貧者には貧者なりの戦術があるし、クルマの走破性を上げることばかりにこだわらない方が、磨ける技能もあるってことは知っておいても悪くないんじゃないかと思います。



■車にお金をかける前に出来ることはたくさんある


一度、クルマに走破性を持たせてしまうとグレードダウンするのは結構厳しいと思う。

だから、「改造しよう!」と思ったら、一度立ち止まって「その改造は本当に自分のためになることなのだろうか?」と考えてみてもらいたいと思う。


何度も言うが、走破性が劣るクルマをなんとか腕を使って操ることは非常に楽しい(笑


アドレナリンじゃなく、エンドルフィン(幸福ホルモン?)がドパドパ出ているのを感じられる瞬間だ。(^^



競技主体の方などは、こんな考え方を持たなくて構わないが、一応、そういうクロカンの愉しみ方もあるってことを知っておいて損はないと思う。

選択肢は多くて損はないだろう。




※こちらの動画では、斜面に右前タイヤを登らせる際に揺り返しを使ってエンジンの粘りだけに頼らずポンと登らせています

Posted at 2012/05/31 18:46:54

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