セルフレスキューテクニック
「単独行が好き♪」
・・・ということで今回のレポートは「セルフ・レスキュー」についてお話したいと思います。
■もっと単独行を楽しもう
いきなり脱線して始まりますが、先日、LCCOの走行会に参加(?)していて、皆がなかなか走りに出ようとしないので業を煮やして、Jr.と単独で先に走りに出ていました。
僕は昔からこんな風に結構自分勝手なヤツなのですが(笑)、これはクロカンの世界では別段、悪い話ではなく、ある程度自分で自分を救える技と装備を整えている人はもっと積極的にやればいいと僕は思っています。
■「つるんで走るだけが能じゃないだろう?」
先日の記事で、「クロカンの練度を走行時間などで言ってみるのはどうだろう?」というようなものを上げたことがありました。
僕の場合、おそらくですが、これまでクロカンの現場でハンドル握って運転してたり、レスキューやウインチングなど、実際になんらかの操作をしている通算時間はおそらく1000時間を超えていると思うのですが、
この”クロカンの実稼働時間”というのは、友達とだらだらしゃべっていたり、他人の走りを観ているだけでは稼げません。
もちろん、他人の走りを観て勉強するってのもアリだし、ウェブやYouTube動画などで観て学ぶってのも大事だとは思うのですが、
細かいフィーリングや、深い経験値ってのはやっぱり自分自身の五感で得ていくものなので、現場での実稼働に及ぶものはないと思います。
これは何もクロカンだけの話ではなく、仕事などでスキルを身につける際にも「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」と言われる、「仕事しながらスキルを身につけるトレーニング手法」が非常に有効であるのと同じことですね。
脱線したので戻しますが、そんな感じでクロカンの実働時間を稼ぐにはある程度、周囲のペースに流されず単独行をするってのはアリなんじゃないかと思います。
■プチ単独行をしよう
先日の走行会は全体で60台ほどがスポーツランド岡山という箱庭に集まっていたので、「単独行?」というとピンと来ない上級者は多いと思うので、ちょっと言い方を変えて「プチ単独行」としてみましょうか。
この「プチ単独行」なら、台数が多かろうが、狭いコースで多く集まる状況やランクルミーティングみたいに基本、走りが目的じゃないイベントなどでも比較的、実施しやすいです。
プチ単独行なら、広場横のちょっとした障害物(オブスタクル)で遊ぶことも出来ますし、周囲に人やクルマが多くいるのであれば、彼らへの話題提供にもなるし、万が一スタックや転倒などをやらかしたとしても、すぐ助けてもらうことも出来る。
つまり、比較的初心者や、道具などが揃っていない人も安心して攻めることも出来るってわけだ。
「誰も手も借りないぜ」っていうような中級者以上は、アンカーもなるべくなら誰の手も借りないようにすればいいかもしれないが、
たとえばテージャスランチみたいに牧場の真ん中にポツンとコースがあるような処ではアンカーになる木や岩などが見当たらないこともある。
そういう場合に限り、例外的にアンカーだけ他のクルマにお願いするという遊び方もある。
もちろん、グランドアンカーなどを用意して引っ張るようにしてもいいかもしれませんね。
(僕も以前はグレーチングと杭数本利用してグランドアンカーとして持ち運んでいたこともあったが、現在は重すぎることもあるのと、SLOやいつもの山みたいにアンカーに事欠かない場所を走る機会が多いので持ち歩いてません)
■ほとんどの場合は予備ワイヤーと予備のトウロープでグランドアンカーの代用は可能
ちょっと余談になってしまうのだが、岡山を中心とした地方で、「ほんまにアンカーになるものがない(汗)」と焦ってしまうような場所は結構少なく、広島のテージャスランチや、兵庫の福崎などが割とアンカーがなくて困る場所がある。
スポーツランド岡山も、広場が場合によっては「アンカーは100m先」ってことがあるくらいなのだが、逆の言い方をすれば、予備ワイヤーも含めて100mほどの長さで引っ張れるようにしておけば、ほとんどの場所であらゆる方向で牽引が可能ということが言えるわけだ。
これは、いつも走りに行っていた山の中でぼくらが「ムーミン谷」と呼んでいたポイントがあるのだが、
そこのある斜面を登る際は、アンカーになる木で手頃な強度のものが少なく、アンカーになる木を心配しながらウインチングする・・・ということで、アンカー への負担を抑えるようにトルクアシストをうまく使わねばいけないということがあったため、随分とトルクアシストの習得に役にたった思い出がある。
ただ、明らかに弱いと分かっているアンカーで引っ張るのは、危険性の問題もあるし、トルクアシストを上手に使いこなせない初級~中級者はしないほうがいいだろうと思う。
そこで、必要になってくるのは”アンカーを分散させる”という技術。
つまり、一本ではひ弱で使えない木なのだが、5~6本をまとめると結構頑丈になって使えるようになることがあります。
これらの「分散アンカー」とか「空中アンカー」などと呼ばれることがあるので、これらを少し説明してみたいと思います。
■分散アンカーとは?
まず分散アンカーについてご説明します。
分散アンカーを使う目的は、先ほども言ったように主に「弱い木などを数本まとめてアンカーにすることです。
例を挙げればこんな感じ。
これは5本の木を2つのグループに分けて、それぞれ2つのグループをつないでいる例ですね。
2つのグループはウインチワイヤーでつないでいますが、向きを変えるために1つ滑車を使っています。
これは束ねる例ですが、長いトウロープを使ってまとめて使う方法としてはこんな使い方もあります。
これは左端の木にまず巻きつけておいて、残りの木に荷重が分散するように工夫してトウロープを張り巡らせた応用法ですね。
ちなみに左端の木に止めているのはチョークとしって、トウロープの輪っかの中にロープと木を通すことで固定させる方式を使っています。
続きて、「空中アンカー」について説明したいと思います。
■空中アンカーとは?
空中アンカーとは、文字通り「空中にアンカーを作る」という方法です。
これは、例えばまっすぐ引っ張りあげたいのだが、その向きにアンカーになる木がなく、2つ以上のアンカーを利用し、「空中にアンカーを出現させる」というものです。
↑真ん中の赤い丸は滑車
このように、左右にアンカーが分かれていて、そちらに引っ張ってもいいのだがなるべくなら車の向きに対してまっすぐ巻きとりたい場合などに使うことがあります。
これは、泥沼などにハマってしまい、横引きするとワイヤーが破断してしまう場合などに用いられる手です。
単独行で遊ぶようになると、この分散アンカーや空中アンカーはよく使うようになるので、ぜひ普段のクロカンなどでも積極的に使ってみてください。
これらのようにアンカーを分散させる場合は、最低でも2~3のトウロープと、1~2個の滑車、3~4個のS字フックなどが必要となってくるのと、予備ワイヤーがいくつか必要となってくる場合があります。
■使用している牽引関連用品の紹介
あとあって便利なのは、ワイヤークリップ(ワイヤーの真ん中で引っ掛けて使うことでワイヤーの長さを調節するもの)や、ハンドウインチ、小型のチェンブロなどがあると応用範囲がさらに広がりますので、オススメです。
これは僕がもっているワイヤークリップ。
これはテコの原理でワイヤーをロックさせるタイプのものだが、他にスライドさせてワイヤーを挟み込んでロックするタイプのものもある。
ただ、どちらのタイプもワイヤーを痛めることになるので、要らなくなったワイヤーなどを使うと良いだろう。
僕の場合は、ウインチングで切れたワイヤーを予備ワイヤーにして、そちらでよく使ってました。
分解するとこうなります。
逆向きで組もうとすると穴の位置が微妙に合わない親切設計です。
ハイリフトジャッキを使った尺取虫戦法(ハイリフトジャッキをハンドウインチみたいに使う方法)などでは必需品ですね。
また、空中アンカーなど、真ん中にくる滑車を微妙な位置に調整したい場合などにもワイヤークリックで長さを調整することがよくあります。
僕が使っているトウロープは1・2・3mの合計3本。
もっと長いロープを使っている人もいるが、長さが違うロープを複数持っておけば、空中アンカーなどで楽に調整出来ることもあります。
これは余談ですが、僕はクッションロープは使わない主義です。
ジムニーなどでウインチを載せてないクルマでは必需品の場合もありますが、細かいテンションの管理がまず無理だし、ロープが破断したときのリカバリーが難しかったり、危険度などもあるので重量車では使うべきではないと思ってます。
ですので、スノーアタックなどでも僕らはウインチやトウロープを多用します。
滑車は軸にベアリングがちゃんと入っているオタフク滑車を2個使用。
小さい方がスイベルする5インチ。
大きいほうがスイベルしない6インチ。
普通は6インチをよく使っています。
S字フックは必需品ですねぇ。
これは10年ほど前に愛用していたクロカン用シューズ。
横からみてもかなりいかついトレッドパターンをしていることが分かると思うが、実際、ウインチングなどでは足場の悪い斜面を行ったり来たりすることが多いので、グリップがよい靴というのはクルマのタイヤの選択並に重要だと思っている。
この靴はまるでスワンパーみたいなパターンをしてたので泥の斜面などにもよく食いついてくれましたし、靴の裏が薄く柔かいので、岩場などでも柔軟にフィットしてくれて非常に便利でした。
欠点としてはなかなか売っているのを見かけないこと。
現在は、普通の靴しか持ってないのでまた似たような靴が欲しいと思ってます。
・・・いかがでしたでしょうか。
セルフレスキューがある程度出来るようになれば、「一緒に来ている人が走ってくれるのを待とう」とか、「走る人がいないと走りに行かないよ」なんて言わずとも、自分のペースでクロカンの実稼働時間や経験値を貯めることが非常にカンタンに出来るようになる。
人それぞれの楽しみ方があるので、全ての人にこれを押し付けるわけではないのだが、僕はこんな方法で人より多く走り込みをしてきたし、ウインチングやセルフレスキューの経験値を積んできたと思っています。
ただ、今の四駆のクロカンのシーンでは、明らかに自走だけとか、自走中心の人が99%で、自分のように積極的に引っ張ろうだとか、「ハマるかも?」というところに臆せず突っ込んでいくタイプは(特に自分の周りでは)極めて少数派になると思っている。
先日も言ったとおり、ランクル60系・70系や80系、サファリなどという重量級のクロカン車はこれらレスキュー用品を大量に積んでの汎用的な(牽引を前提とした)クロカンが非常に得意だし、僕としてはその特徴を使わないのはもったいないと思っている。
また、JEEPやジムニーのように比較的軽量なクルマの場合も、ここまで重いウインチや牽引用具満載にしなくても、それら用品を厳選して載せておくことで、比較的安全な単独行が可能になると思っているし、
それらを載せておくことで、自走の幅や遊びの幅も飛躍的に増えていくと思っている。
■ハンドルロックも使えるようになっておこう
案外というか、クロカンの上級者でも牽引の方をさっぱりしない人は知らないことが多い技として、「ハンドルロックを使った牽引術」があります。
このハンドルロックの技は、単独行をする場合は必需となる技なのでぜひ知っておいてください。
まず、ハンドルロックとは、イグニッションキーを抜いた状態で、ハンドルが回らないようロックして盗難を防止するための機構の事です。
ですのでこの機構は全てのクルマについていて、これが壊れているクルマは車検で通らないはずですね。
単独行になると、クルマから降りて外からクルマを引くということが当然多くなるのですが、クルマを外で引く場合、何もしてないと勝手にハンドルがくるくる周り、タイヤの向きがあらぬ方向を向いてしまい、思わぬ方向にクルマが移動してしまうことがよくあります。
そこで、ハンドルロックの仕組みを使い、タイヤの向きを固定したいところに合わせた後でエンジンを切り、イグニッションキーを抜いてハンドルを左右に少しこじれば、「ガチッ」とロックが入り、それ以上ハンドルが回らなくなります。
先日はこの時にハンドルロックを使い、安全にクルマから降りています。
今回の場合、溝に落ちているタイヤが荷重がかかっていてもこれ以上、どちらかにハンドルが廻ってしまうということはないので、ぶっちゃけハンドルロックを使う必要はなかったのですが、
まぁ、牽引初心者がやっているということもありますし、基本に忠実なセルフレスキューを覚えましょうという初心者講習会の主旨にも合致している(笑)ということもあるので、安全策のため、ハンドルロックを使わせているって感じでしたね。
本当にハンドルロックが必要なのはこういう状況などですね。
これは、傾斜70度ほどで高低差が5m?ほどある斜面をチルホールで下ろしている画像ですが、
この場合などではチルで下ろしている最中にハンドルがあらぬ方向をむいてしまうことは非常によくあります。
ですので、チルダウンする前にエンジンを切って、キーを抜き、ハンドルがロックされていることを確認して、チルでゆっくり下ろしていくわけです。
これは余談ですが、クロカン初心者の中で、斜面の途中で止まってしまい、クルマから降りて地形を確認したりする場合に、エンジンをつけっぱなしでサイドブレーキだけの拘束力で平気でクルマから離れる人がいますが、
軽量級のクルマならいざ知らず、重量級のクルマでそれをしてしまうと非常に危険なので、面倒でも一旦エンジンを切り、クルマから離れるようにしたほうがいいと思います。
ただ、これが出来ないクルマもありますね。
SJ30など、キャブレター仕様のガソリンエンジン車などは、傾いている最中にエンジンを停めてしまうと、再始動できなかったり、なかなかエンジンが掛からない場合もあるので、そこは臨機応変に対応すればいいと思います。
(軽量車の場合、かなりの斜面で停止していてもサイドブレーキだけで十分停車出来ることもありますね)
■草食系四駆乗り?
自分らがクロカンを始めた頃は、クロカンという趣味が持つ開拓精神だったり、チャレンジャー精神みたいなものもあるのかもしれませんが、目がギラギラしている肉食系の四駆乗りがもっと多かったように思いますネ。
ですが、「マナーがなってない」とか、「飲酒運転など平気でしてしまう」というようなコンプライアンス(法令遵守)の問題、クロカンの現場での危険行為を 平気でする、クロカンの現場で起こる事故の問題など、問題が全くなかったですよとか、昔がよかったネと言うつもりはサラサラないのですが、
なんか最近の若い子を見ていて、僕らが20代の頃、ギラギラしてクロカンをしていたあの”熱量”をあまり感じないんですよね。
まぁ、うちのJr.は母親の腹の中にいる当時からランクル60でクロカンの現場に連れ出しているのでちょっと違うのですが、
「これも競争させることを過度に控えさせてきたゆとり世代の弊害なんだろうか?」って思うことも最近は増えてきました。
クロカンなんて”失敗してナンボ”みたいなところもあるし、僕も随分とアレコレやらかしてきたし、そういう経験があるので今、やっとそこそこ使えるように なっていると思うので、もっと失敗を恐れず、たまには「単独でガンガン行ってくれる」ようになっていってもらいたいと思います。
・・・ということで今回のレポートは「セルフ・レスキュー」についてお話したいと思います。
■もっと単独行を楽しもう
いきなり脱線して始まりますが、先日、LCCOの走行会に参加(?)していて、皆がなかなか走りに出ようとしないので業を煮やして、Jr.と単独で先に走りに出ていました。
僕は昔からこんな風に結構自分勝手なヤツなのですが(笑)、これはクロカンの世界では別段、悪い話ではなく、ある程度自分で自分を救える技と装備を整えている人はもっと積極的にやればいいと僕は思っています。
■「つるんで走るだけが能じゃないだろう?」
先日の記事で、「クロカンの練度を走行時間などで言ってみるのはどうだろう?」というようなものを上げたことがありました。
僕の場合、おそらくですが、これまでクロカンの現場でハンドル握って運転してたり、レスキューやウインチングなど、実際になんらかの操作をしている通算時間はおそらく1000時間を超えていると思うのですが、
この”クロカンの実稼働時間”というのは、友達とだらだらしゃべっていたり、他人の走りを観ているだけでは稼げません。
もちろん、他人の走りを観て勉強するってのもアリだし、ウェブやYouTube動画などで観て学ぶってのも大事だとは思うのですが、
細かいフィーリングや、深い経験値ってのはやっぱり自分自身の五感で得ていくものなので、現場での実稼働に及ぶものはないと思います。
これは何もクロカンだけの話ではなく、仕事などでスキルを身につける際にも「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」と言われる、「仕事しながらスキルを身につけるトレーニング手法」が非常に有効であるのと同じことですね。
脱線したので戻しますが、そんな感じでクロカンの実働時間を稼ぐにはある程度、周囲のペースに流されず単独行をするってのはアリなんじゃないかと思います。
■プチ単独行をしよう
先日の走行会は全体で60台ほどがスポーツランド岡山という箱庭に集まっていたので、「単独行?」というとピンと来ない上級者は多いと思うので、ちょっと言い方を変えて「プチ単独行」としてみましょうか。
この「プチ単独行」なら、台数が多かろうが、狭いコースで多く集まる状況やランクルミーティングみたいに基本、走りが目的じゃないイベントなどでも比較的、実施しやすいです。
プチ単独行なら、広場横のちょっとした障害物(オブスタクル)で遊ぶことも出来ますし、周囲に人やクルマが多くいるのであれば、彼らへの話題提供にもなるし、万が一スタックや転倒などをやらかしたとしても、すぐ助けてもらうことも出来る。
つまり、比較的初心者や、道具などが揃っていない人も安心して攻めることも出来るってわけだ。
「誰も手も借りないぜ」っていうような中級者以上は、アンカーもなるべくなら誰の手も借りないようにすればいいかもしれないが、
たとえばテージャスランチみたいに牧場の真ん中にポツンとコースがあるような処ではアンカーになる木や岩などが見当たらないこともある。
そういう場合に限り、例外的にアンカーだけ他のクルマにお願いするという遊び方もある。
もちろん、グランドアンカーなどを用意して引っ張るようにしてもいいかもしれませんね。
(僕も以前はグレーチングと杭数本利用してグランドアンカーとして持ち運んでいたこともあったが、現在は重すぎることもあるのと、SLOやいつもの山みたいにアンカーに事欠かない場所を走る機会が多いので持ち歩いてません)
■ほとんどの場合は予備ワイヤーと予備のトウロープでグランドアンカーの代用は可能
ちょっと余談になってしまうのだが、岡山を中心とした地方で、「ほんまにアンカーになるものがない(汗)」と焦ってしまうような場所は結構少なく、広島のテージャスランチや、兵庫の福崎などが割とアンカーがなくて困る場所がある。
スポーツランド岡山も、広場が場合によっては「アンカーは100m先」ってことがあるくらいなのだが、逆の言い方をすれば、予備ワイヤーも含めて100mほどの長さで引っ張れるようにしておけば、ほとんどの場所であらゆる方向で牽引が可能ということが言えるわけだ。
これは、いつも走りに行っていた山の中でぼくらが「ムーミン谷」と呼んでいたポイントがあるのだが、
そこのある斜面を登る際は、アンカーになる木で手頃な強度のものが少なく、アンカーになる木を心配しながらウインチングする・・・ということで、アンカー への負担を抑えるようにトルクアシストをうまく使わねばいけないということがあったため、随分とトルクアシストの習得に役にたった思い出がある。
ただ、明らかに弱いと分かっているアンカーで引っ張るのは、危険性の問題もあるし、トルクアシストを上手に使いこなせない初級~中級者はしないほうがいいだろうと思う。
そこで、必要になってくるのは”アンカーを分散させる”という技術。
つまり、一本ではひ弱で使えない木なのだが、5~6本をまとめると結構頑丈になって使えるようになることがあります。
これらの「分散アンカー」とか「空中アンカー」などと呼ばれることがあるので、これらを少し説明してみたいと思います。
■分散アンカーとは?
まず分散アンカーについてご説明します。
分散アンカーを使う目的は、先ほども言ったように主に「弱い木などを数本まとめてアンカーにすることです。
例を挙げればこんな感じ。
これは5本の木を2つのグループに分けて、それぞれ2つのグループをつないでいる例ですね。
2つのグループはウインチワイヤーでつないでいますが、向きを変えるために1つ滑車を使っています。
これは束ねる例ですが、長いトウロープを使ってまとめて使う方法としてはこんな使い方もあります。
これは左端の木にまず巻きつけておいて、残りの木に荷重が分散するように工夫してトウロープを張り巡らせた応用法ですね。
ちなみに左端の木に止めているのはチョークとしって、トウロープの輪っかの中にロープと木を通すことで固定させる方式を使っています。
続きて、「空中アンカー」について説明したいと思います。
■空中アンカーとは?
空中アンカーとは、文字通り「空中にアンカーを作る」という方法です。
これは、例えばまっすぐ引っ張りあげたいのだが、その向きにアンカーになる木がなく、2つ以上のアンカーを利用し、「空中にアンカーを出現させる」というものです。
↑真ん中の赤い丸は滑車
このように、左右にアンカーが分かれていて、そちらに引っ張ってもいいのだがなるべくなら車の向きに対してまっすぐ巻きとりたい場合などに使うことがあります。
これは、泥沼などにハマってしまい、横引きするとワイヤーが破断してしまう場合などに用いられる手です。
単独行で遊ぶようになると、この分散アンカーや空中アンカーはよく使うようになるので、ぜひ普段のクロカンなどでも積極的に使ってみてください。
これらのようにアンカーを分散させる場合は、最低でも2~3のトウロープと、1~2個の滑車、3~4個のS字フックなどが必要となってくるのと、予備ワイヤーがいくつか必要となってくる場合があります。
■使用している牽引関連用品の紹介
あとあって便利なのは、ワイヤークリップ(ワイヤーの真ん中で引っ掛けて使うことでワイヤーの長さを調節するもの)や、ハンドウインチ、小型のチェンブロなどがあると応用範囲がさらに広がりますので、オススメです。
これは僕がもっているワイヤークリップ。
これはテコの原理でワイヤーをロックさせるタイプのものだが、他にスライドさせてワイヤーを挟み込んでロックするタイプのものもある。
ただ、どちらのタイプもワイヤーを痛めることになるので、要らなくなったワイヤーなどを使うと良いだろう。
僕の場合は、ウインチングで切れたワイヤーを予備ワイヤーにして、そちらでよく使ってました。
分解するとこうなります。
逆向きで組もうとすると穴の位置が微妙に合わない親切設計です。
ハイリフトジャッキを使った尺取虫戦法(ハイリフトジャッキをハンドウインチみたいに使う方法)などでは必需品ですね。
また、空中アンカーなど、真ん中にくる滑車を微妙な位置に調整したい場合などにもワイヤークリックで長さを調整することがよくあります。
僕が使っているトウロープは1・2・3mの合計3本。
もっと長いロープを使っている人もいるが、長さが違うロープを複数持っておけば、空中アンカーなどで楽に調整出来ることもあります。
これは余談ですが、僕はクッションロープは使わない主義です。
ジムニーなどでウインチを載せてないクルマでは必需品の場合もありますが、細かいテンションの管理がまず無理だし、ロープが破断したときのリカバリーが難しかったり、危険度などもあるので重量車では使うべきではないと思ってます。
ですので、スノーアタックなどでも僕らはウインチやトウロープを多用します。
滑車は軸にベアリングがちゃんと入っているオタフク滑車を2個使用。
小さい方がスイベルする5インチ。
大きいほうがスイベルしない6インチ。
普通は6インチをよく使っています。
S字フックは必需品ですねぇ。
これは10年ほど前に愛用していたクロカン用シューズ。
横からみてもかなりいかついトレッドパターンをしていることが分かると思うが、実際、ウインチングなどでは足場の悪い斜面を行ったり来たりすることが多いので、グリップがよい靴というのはクルマのタイヤの選択並に重要だと思っている。
この靴はまるでスワンパーみたいなパターンをしてたので泥の斜面などにもよく食いついてくれましたし、靴の裏が薄く柔かいので、岩場などでも柔軟にフィットしてくれて非常に便利でした。
欠点としてはなかなか売っているのを見かけないこと。
現在は、普通の靴しか持ってないのでまた似たような靴が欲しいと思ってます。
・・・いかがでしたでしょうか。
セルフレスキューがある程度出来るようになれば、「一緒に来ている人が走ってくれるのを待とう」とか、「走る人がいないと走りに行かないよ」なんて言わずとも、自分のペースでクロカンの実稼働時間や経験値を貯めることが非常にカンタンに出来るようになる。
人それぞれの楽しみ方があるので、全ての人にこれを押し付けるわけではないのだが、僕はこんな方法で人より多く走り込みをしてきたし、ウインチングやセルフレスキューの経験値を積んできたと思っています。
ただ、今の四駆のクロカンのシーンでは、明らかに自走だけとか、自走中心の人が99%で、自分のように積極的に引っ張ろうだとか、「ハマるかも?」というところに臆せず突っ込んでいくタイプは(特に自分の周りでは)極めて少数派になると思っている。
先日も言ったとおり、ランクル60系・70系や80系、サファリなどという重量級のクロカン車はこれらレスキュー用品を大量に積んでの汎用的な(牽引を前提とした)クロカンが非常に得意だし、僕としてはその特徴を使わないのはもったいないと思っている。
また、JEEPやジムニーのように比較的軽量なクルマの場合も、ここまで重いウインチや牽引用具満載にしなくても、それら用品を厳選して載せておくことで、比較的安全な単独行が可能になると思っているし、
それらを載せておくことで、自走の幅や遊びの幅も飛躍的に増えていくと思っている。
■ハンドルロックも使えるようになっておこう
案外というか、クロカンの上級者でも牽引の方をさっぱりしない人は知らないことが多い技として、「ハンドルロックを使った牽引術」があります。
このハンドルロックの技は、単独行をする場合は必需となる技なのでぜひ知っておいてください。
まず、ハンドルロックとは、イグニッションキーを抜いた状態で、ハンドルが回らないようロックして盗難を防止するための機構の事です。
ですのでこの機構は全てのクルマについていて、これが壊れているクルマは車検で通らないはずですね。
単独行になると、クルマから降りて外からクルマを引くということが当然多くなるのですが、クルマを外で引く場合、何もしてないと勝手にハンドルがくるくる周り、タイヤの向きがあらぬ方向を向いてしまい、思わぬ方向にクルマが移動してしまうことがよくあります。
そこで、ハンドルロックの仕組みを使い、タイヤの向きを固定したいところに合わせた後でエンジンを切り、イグニッションキーを抜いてハンドルを左右に少しこじれば、「ガチッ」とロックが入り、それ以上ハンドルが回らなくなります。
先日はこの時にハンドルロックを使い、安全にクルマから降りています。
今回の場合、溝に落ちているタイヤが荷重がかかっていてもこれ以上、どちらかにハンドルが廻ってしまうということはないので、ぶっちゃけハンドルロックを使う必要はなかったのですが、
まぁ、牽引初心者がやっているということもありますし、基本に忠実なセルフレスキューを覚えましょうという初心者講習会の主旨にも合致している(笑)ということもあるので、安全策のため、ハンドルロックを使わせているって感じでしたね。
本当にハンドルロックが必要なのはこういう状況などですね。
これは、傾斜70度ほどで高低差が5m?ほどある斜面をチルホールで下ろしている画像ですが、
この場合などではチルで下ろしている最中にハンドルがあらぬ方向をむいてしまうことは非常によくあります。
ですので、チルダウンする前にエンジンを切って、キーを抜き、ハンドルがロックされていることを確認して、チルでゆっくり下ろしていくわけです。
これは余談ですが、クロカン初心者の中で、斜面の途中で止まってしまい、クルマから降りて地形を確認したりする場合に、エンジンをつけっぱなしでサイドブレーキだけの拘束力で平気でクルマから離れる人がいますが、
軽量級のクルマならいざ知らず、重量級のクルマでそれをしてしまうと非常に危険なので、面倒でも一旦エンジンを切り、クルマから離れるようにしたほうがいいと思います。
ただ、これが出来ないクルマもありますね。
SJ30など、キャブレター仕様のガソリンエンジン車などは、傾いている最中にエンジンを停めてしまうと、再始動できなかったり、なかなかエンジンが掛からない場合もあるので、そこは臨機応変に対応すればいいと思います。
(軽量車の場合、かなりの斜面で停止していてもサイドブレーキだけで十分停車出来ることもありますね)
■草食系四駆乗り?
自分らがクロカンを始めた頃は、クロカンという趣味が持つ開拓精神だったり、チャレンジャー精神みたいなものもあるのかもしれませんが、目がギラギラしている肉食系の四駆乗りがもっと多かったように思いますネ。
ですが、「マナーがなってない」とか、「飲酒運転など平気でしてしまう」というようなコンプライアンス(法令遵守)の問題、クロカンの現場での危険行為を 平気でする、クロカンの現場で起こる事故の問題など、問題が全くなかったですよとか、昔がよかったネと言うつもりはサラサラないのですが、
なんか最近の若い子を見ていて、僕らが20代の頃、ギラギラしてクロカンをしていたあの”熱量”をあまり感じないんですよね。
まぁ、うちのJr.は母親の腹の中にいる当時からランクル60でクロカンの現場に連れ出しているのでちょっと違うのですが、
「これも競争させることを過度に控えさせてきたゆとり世代の弊害なんだろうか?」って思うことも最近は増えてきました。
クロカンなんて”失敗してナンボ”みたいなところもあるし、僕も随分とアレコレやらかしてきたし、そういう経験があるので今、やっとそこそこ使えるように なっていると思うので、もっと失敗を恐れず、たまには「単独でガンガン行ってくれる」ようになっていってもらいたいと思います。
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