雨の日のクロカンテクニック
本来なら、グランドアンカーの記事を書きたいと思っているのですが、今日は雨が降っているってこともあるのと、画像がないので、今回は前々からまとめたいと思っていた雨の日のクロカンテクニックについてお話したいと思います。
■雨の日は全く別
僕は以前から、「雨が降ったら走りに行こう」って思うことが多くあります。
理由はカンタンで、同じ場所を走っていても雨の日は晴れの日と全く違うからです。
僕がこういう風に思うのは、「岡山」の風土にもかなり影響を受けていると思います。
なんせ、岡山県南部は、香川県と並んで日本全国で最も晴れの日が多いことで知られているからです。
ちなみに岡山県のキャッチコピーに「晴れの国 岡山」ってのがあります。
ということで、岡山県の南部に住んでいると、自然と雨の日の経験値は少なくなるのです。
それに追い討ちをかけるのが、走ることが出来るポイントの地質の問題。
岡山県の東部や兵庫県の方面に走りに行くと、石灰質の場所が増えてきたり、北部に行くと、甲子園の土でも知られている「真っ黒な火山灰」が増えてくるので、雨の日はビックリするほどグリップしなくなるのですが、
岡山市内唯一のコースのスポーツランド岡山や、以前は走れた神石、広島県のテージャスランチ、広島市のタマダなどは基本的にマサ土なので、雨の日も他の地質と比べたらそれほど極端に走りにくくならないんです。
ちなみに神石というのはこんな場所
・その1
・その2
見事なマサ土ですね(^^
マサ土の特徴としては、晴れていたらほぼ最強のグリップ力を発揮してくれるということは間違いないのですが、雨の日、泥状になったとしてもそれほど重くならないとか、タイヤの溝に詰まった泥のハケが元々かなり良いなどというものがあります。
ちなみに英語で「Buckshot」(バックショット)のことをショットガンの玉の中でも大粒の散弾(鹿玉)のことを言いますが、四駆用語ではタイヤで吹き飛ばした泥の塊のことをいいます。
マサ土は雨の日も、他の土質や岩などが露出している地形と比べたら比較的グリップ力もトラクションも発揮させやすいのだが、それでも舐めてかかると自殺行為になります。
以前、CCV誌でジオランダーのことを「あれはオールテレーンだ」と評したことがあったが、確かに雨の日に履いているのを観ていると、トラクション、グリップともにかなり不足していることに気が付く。
「雨の日」は、晴れの日とは全く違うので、走り慣れている場所ではなんでもないことが、雨が振った途端に全く出来なくなったり、危険度が急に跳ね上がることも珍しくない。
だから、雨の日に走るのであれば、タイヤも含めて装備など全て万全の準備をすることから始めないといけないと思っています。
■雨の日:運転面での違い(ヒルクライム)
ディーゼルの重量級の四輪駆動車の場合、グリップの良い日は基本的にクローリング中心だと思っているのですが、雨の日になるとクローリングにこだわっていたのではお話にならないことが多くあります。
ですので、難所を走る場合は基本的にローセコ(Lowレンジと2速)を多用し、タイヤをぶん回すような使い方をすることになります。
雨の日のグリップ力の低下や、トラクションの低下は、車の重量がより重い方が顕著になります。
私のクロカンは自走力に頼らないので、実際のところあまり問題はないのですが、重量物(レスキュー用品)を大量に載せすぎると、晴れの日以上に、雨の日はトラクション不足などに悩まされることになります。
走り方ですが、私は特に雨の日は一回で走破させることにはコダワリません。
最初は、ローロー(Lowレンジと1速)でゆるゆると這わせておいて、少しずつ前進距離を伸ばしていく・・・という走らせ方をします。
例えば、全長20mほどのヒルクライムの場合は、最初のアタックでは3m、次は4m、その次は5m・・・という風に少しずつ到達距離を伸ばしていくわけです。
当然、登った分は必ずバックダウンしなければいけないため、重要度というか注意点は「バックダウンするとき」ということになります。
最近の雨の日のクロカンで言うと9月30日のスポーツランド岡山でのクロカンがありましたが、例えばこのシーン、皆さんはどう思いましたか?
実はこの数台前、SJ30がこのヒルクライムでリアタイヤが足払いをされて転倒しているのですが、
重心の低いSJ30でも転倒する可能性のあるヒルクライムです。
雨の日、なぜ怖いのかというと、普段なら完全グリップで降りてこれる処もグリップが全く効かないので、勢いがついてバックしてしまうため、晴れの日ならな んでもないギャップや段差でもこのように引っかかったり、派手に落ち込み、足払いを受けたみたいになり「コロリ」といくことが多いからですね。
ですので、僕がこの斜面を登るのであれば、このギャップがあるところまでなら何度でも安心して攻めますし、バックダウンもします。
ですが、このギャップがあるところを境に、上では絶対舐めた走らせ方はしませんね。
以前のブログでも書いたことがあるのですが、僕が運転しているとするなら、坂の上でたとえ車が止まっていたとしても、絶対車を斜面の途中、(しかもこのギャップがある上)で止めたりはしませんね。
ですので、以前のブログでも「オカマを掘ってもいいくらいのつもりで登りきれ」って言っているわけです。
重量車の場合、転倒で被る被害は軽量車の比じゃないですから。
慎重になるのは当然です。
(これはおそらくですが、僕の車なら溝の底にタイヤを落とすラインでバックダウンしてもコケないと思いますけどネ)
Jr.の動画を見てもわかりますが、上までクローリングで登れていたとしても、再発進ではまったく進めなくなる、ということが度々起こるのが「雨の日のヒルクライム」の怖いところです。
■グリップ力とトラクションの違いを理解しておこう
雨の日なら、さきほど登場した小さな溝でも十分過ぎるほど遊べますね。
まだ、このヒルクライムは難易度が低いですが、激しい場所になると上から下までこれくらいの段差の溝が延々続くヒルクライムなども珍しくありません。
そういう場合は、車高を上げ過ぎていない僕のような車はバックダウンも比較的同系車種を相手にした場合、有利になることがあります。
雨の日は、圧倒的にタイヤの優劣が出易いことは多くの方が体験済みだと思います。
晴れの日は、極端な話、スリックタイヤですら走れます。
しかし、雨の日は路面の泥をハネ飛ばしたり、路面にタイヤの突起物やブロックを積極的に突き立てることでトラクションやグリップ力を発生させるので、タイヤのパターンや溝の深さなどが非常に重要となってきます。
余談かもしれませんが、「グリップ」と「トラクション」の違いを説明しておきます。
グリップ力とはタイヤが地面に接地する際、滑らずにグリップを維持できる限界の動摩擦抵抗力のことを言うのですが、
トラクションというのは、車輪が路面に対して発生させる、牽引(駆動)力 すべてのことを言います。
つまり、「グリップ力」×「タイヤの回転数」=「トラクション」といえるのかもしれませんね。
(間違ってたらゴメンなさい)
ただ、これが単純にこの計算式で説明できないのが「泥ハケの性能によるトラクションの違い」ですね。
たとえばマッテレや、先ほども言ったジオランダーのようにシーランド比が低い(溝の面積が狭い)タイヤは、泥ハケに問題があることが多いので、グルッと一 周タイヤを回してきても、相変わらずタイヤの溝の中に泥が残っていることが多く、急激にグリップ力を失い、それに伴いトラクションも減少する・・・という 現象が起こります。
それに対して、スーパースワンパーなど「トラクションタイヤ」と呼ばれているタイヤは、泥ハケを優先して設計されたものは、グルッとタイヤを一周させると溝の中の泥がすべて排出されて次に地面に接地する際には「まっさらな状態」になっていることが多い。
特にトレッドの中央付近に近い部分のシーランド比が高いタイヤの方が、接地したトレッド全面に比較的にまんべんなく圧力がかかります。
「トラクションタイヤ」と同じククリで呼ばれているジープサービスの性能がイマイチなのは、このトレッド面の中央付近のシーランド比がやや低いからです。
本来なら、大きな溝が多いタイヤの側面に強い圧力をかけねばならないのが、タイヤの中央付近に大きな溝がないため、タイヤの中央部の泥ハケがほとんどな く、中央部の面積が増えるため、効果的にタイヤ全体に圧力を分散できないため、「トラクションタイヤ」と言うにはやや物足りない性能になってしまっている わけです。
性能としてはふた昔前のジープサービスを語っても仕方がないので、話を元に戻しますが、雨の日のクロカンは「グリップ力をいかにして得るか」ということと、「トラクションをいかにして稼ぐか」ということを考える必要があります。
■雨の日ならではの走り方
たとえば、雨の日ならではの走り方としてはこんなものがあります。
最初から積極的にタイヤを空転させ、路面に残った泥を排除させることを狙い、2度目の走りで一気に通過させるような走らせ方。
これはヒルクライムなどで比較的多く使います。
ただ、ひとつ注意せねばならないのが、「登れないポイントで余計に掘り返さない事」です。
泥を跳ね飛ばすからだ、と言っても、それは次走る際に、坂の途中でもトラクションをなるべく多く稼ぐためなので、肝心な所で自分のタイヤで大きな段差を作ってしまうとそれが原因で登れなくなることも多いのです。
ですので、坂の途中では比較的、派手にタイヤを空転させながら前進させるのですが、肝心なポイントまで登ってきたらアクセルをオフにしてタイヤと車は慣性だけで当てるのです。
上級者になると上手に当てることで、残った段差などをタイヤでならしながら次に進む時のために耕しておいたり、
何度も前後に車を往復させながら、段差があるところなどで敢えてタイヤを空転させ、ギャップをなだらかにして次のアタックに備えることもありますね。
これなどはスノーアタックなどで比較的一般的に使われている手で、トラクションの悪いリーフ車などでフルアクセルで車を前進させようとすると、ホーシングがジャダーを起こすことで、路面を凸凹にさせやすい。
そこで、次のアタックに備え、わざと凸凹になった路面の上を前後に往復させることでなるべく平にならして、次に走るときに加速させやすくする。
後、雨の日に限らずかもしれないが、タイヤの向きを車に対して真っ直ぐにさせるだけでより多くのトラクションが稼げることが珍しくない。
泥の中や、ぬかるんだ斜面を走っているとき、ステアリングを右か左に切った状態であがいている人が、
タイヤの向きを真っ直ぐにしてやり、アクセル操作に集中した途端に前進出来るようになることは珍しくない。
要するに、タイヤはどちらかに切っているだけで車が動く抵抗になっているのだ。
「ステアリングは真っ直ぐにさせている方が車は前進させ易い」ということは、非常にいろんなシーンで活きてくるので必ず頭の片隅に入れて走った方がいいだろう。
(もちろん、牽引時もタイヤの向きが真正面を向いていた方が少ない牽引力で牽引出来る)
よくトラクションタイヤを履いている人に見かけることに、タイヤのショルダーを効かせようとしているのだろうが、やたらとステアリングを左右に高速に振り回す人がいます。
ソーイングと言われる技で一応、効果はあるのですが、路面を荒らしたり、再現性や確実性があまりない技なので、僕はあまり好きじゃありませんね。
僕はそんな不確実な技を使うよりは、走る度に、その次に走った際に有利になるような布石が打てる走らせ方をする方が好きですね。
あと、雨の日ならではの走りで、かなり上級者向けの技に「ムーンウォーク」と呼んでいる技があります。
■上級者向けの高等テクニック「ムーンウォーク」
これは、正直ここで公開してもいいのか迷う技ではあるのですが、敢えて公開しちゃいましょう。
これは知らずに勝手に使っていることがあると思うのですが、車は後退しているのだが、タイヤは逆に前転している・・・という状況がありますよね。
溝が深いヒルクライムなどで対角線にタイヤが浮きながらバックするときや、路面のミューが極端に低い雪面や雨の日などのバックダウンでよく起こる現象です。
クロカンの基本では、バックダウンするときはバックギアに入れて、タイヤを回しながらバックすること、と教えられると思うのですが、
タイヤをわざとバックダウン中に前転させることで、後退する速度を落とすというかなりの”荒業”です。
これには本当に多くの注意点があり、特に下がった先に障害物があったり、急にグリップが回復されるポイントに差し掛かった際などには、ドライブシャフトやデフなどの駆動系を破損させる恐れがあります。
MT車の場合、「やばい」と思ったらクラッチを切り、駆動を切って路面からの逆向きのトルクと駆動系から伝わる正方向のトルクがぶつからないようにすることは出来るのですが、当然完全に遮断するにはタイムラグが発生することがありますし、
AT車のようにニュートラルに入れても実際にニュートラルになるまではサーボの動作までタイムラグがあるので「やばい」と思った瞬間に操作をしても、もう遅いってことが多いと知っておいた方がいいだろうと思います。
つまり、このムーンウォークという技を使う際には、予め走っている地形を熟知しておき、タイヤが引っかかってしまう前には駆動を切るか、逆にギアをリバースに入れる必要があるわけだ。
■雨の日の走りは、晴れの日の練習の総決算
雨の日の走りは、本当にしっかりとした下見や、走行プラン、繊細な操作、不測の事態が起こった際の反射的なリカバリーなどが要求される。
さらにタイヤの選択、装備の選択、それからそれら装備品などを正しく使いこなせるスキルなども必要となってくる。
もっと細かいところで言うと、雨の日は足元が極めて悪いので靴の選択や、アクセルペダルやブレーキペダル、クラッチペダルが泥で滑らないように細工をしておくとか、ステアリングホイールなども滑らないように工夫をしておいた方が良い場合が多い。
車の操作や装備は雨の日ならではの物も多いが、基本的に雨の日の走りというのは晴れの日、どれだけ濃密な走り込みをしているかどうかで大きく安定性や走破性、できることの可能性が変わってくると思っている。
「晴れの国」に住んでいると、どうしても雨の日に稼げる経験値は稼ぎにくいものなのだが、雨の日は積極的に走りに出てはいかがだろうか?
■おまけ
これにはちょっと笑わせてもらいました(笑
■雨の日は全く別
僕は以前から、「雨が降ったら走りに行こう」って思うことが多くあります。
理由はカンタンで、同じ場所を走っていても雨の日は晴れの日と全く違うからです。
僕がこういう風に思うのは、「岡山」の風土にもかなり影響を受けていると思います。
なんせ、岡山県南部は、香川県と並んで日本全国で最も晴れの日が多いことで知られているからです。
ちなみに岡山県のキャッチコピーに「晴れの国 岡山」ってのがあります。
ということで、岡山県の南部に住んでいると、自然と雨の日の経験値は少なくなるのです。
それに追い討ちをかけるのが、走ることが出来るポイントの地質の問題。
岡山県の東部や兵庫県の方面に走りに行くと、石灰質の場所が増えてきたり、北部に行くと、甲子園の土でも知られている「真っ黒な火山灰」が増えてくるので、雨の日はビックリするほどグリップしなくなるのですが、
岡山市内唯一のコースのスポーツランド岡山や、以前は走れた神石、広島県のテージャスランチ、広島市のタマダなどは基本的にマサ土なので、雨の日も他の地質と比べたらそれほど極端に走りにくくならないんです。
ちなみに神石というのはこんな場所
・その1
・その2
見事なマサ土ですね(^^
マサ土の特徴としては、晴れていたらほぼ最強のグリップ力を発揮してくれるということは間違いないのですが、雨の日、泥状になったとしてもそれほど重くならないとか、タイヤの溝に詰まった泥のハケが元々かなり良いなどというものがあります。
ちなみに英語で「Buckshot」(バックショット)のことをショットガンの玉の中でも大粒の散弾(鹿玉)のことを言いますが、四駆用語ではタイヤで吹き飛ばした泥の塊のことをいいます。
マサ土は雨の日も、他の土質や岩などが露出している地形と比べたら比較的グリップ力もトラクションも発揮させやすいのだが、それでも舐めてかかると自殺行為になります。
以前、CCV誌でジオランダーのことを「あれはオールテレーンだ」と評したことがあったが、確かに雨の日に履いているのを観ていると、トラクション、グリップともにかなり不足していることに気が付く。
「雨の日」は、晴れの日とは全く違うので、走り慣れている場所ではなんでもないことが、雨が振った途端に全く出来なくなったり、危険度が急に跳ね上がることも珍しくない。
だから、雨の日に走るのであれば、タイヤも含めて装備など全て万全の準備をすることから始めないといけないと思っています。
■雨の日:運転面での違い(ヒルクライム)
ディーゼルの重量級の四輪駆動車の場合、グリップの良い日は基本的にクローリング中心だと思っているのですが、雨の日になるとクローリングにこだわっていたのではお話にならないことが多くあります。
ですので、難所を走る場合は基本的にローセコ(Lowレンジと2速)を多用し、タイヤをぶん回すような使い方をすることになります。
雨の日のグリップ力の低下や、トラクションの低下は、車の重量がより重い方が顕著になります。
私のクロカンは自走力に頼らないので、実際のところあまり問題はないのですが、重量物(レスキュー用品)を大量に載せすぎると、晴れの日以上に、雨の日はトラクション不足などに悩まされることになります。
走り方ですが、私は特に雨の日は一回で走破させることにはコダワリません。
最初は、ローロー(Lowレンジと1速)でゆるゆると這わせておいて、少しずつ前進距離を伸ばしていく・・・という走らせ方をします。
例えば、全長20mほどのヒルクライムの場合は、最初のアタックでは3m、次は4m、その次は5m・・・という風に少しずつ到達距離を伸ばしていくわけです。
当然、登った分は必ずバックダウンしなければいけないため、重要度というか注意点は「バックダウンするとき」ということになります。
最近の雨の日のクロカンで言うと9月30日のスポーツランド岡山でのクロカンがありましたが、例えばこのシーン、皆さんはどう思いましたか?
実はこの数台前、SJ30がこのヒルクライムでリアタイヤが足払いをされて転倒しているのですが、
重心の低いSJ30でも転倒する可能性のあるヒルクライムです。
雨の日、なぜ怖いのかというと、普段なら完全グリップで降りてこれる処もグリップが全く効かないので、勢いがついてバックしてしまうため、晴れの日ならな んでもないギャップや段差でもこのように引っかかったり、派手に落ち込み、足払いを受けたみたいになり「コロリ」といくことが多いからですね。
ですので、僕がこの斜面を登るのであれば、このギャップがあるところまでなら何度でも安心して攻めますし、バックダウンもします。
ですが、このギャップがあるところを境に、上では絶対舐めた走らせ方はしませんね。
以前のブログでも書いたことがあるのですが、僕が運転しているとするなら、坂の上でたとえ車が止まっていたとしても、絶対車を斜面の途中、(しかもこのギャップがある上)で止めたりはしませんね。
ですので、以前のブログでも「オカマを掘ってもいいくらいのつもりで登りきれ」って言っているわけです。
重量車の場合、転倒で被る被害は軽量車の比じゃないですから。
慎重になるのは当然です。
(これはおそらくですが、僕の車なら溝の底にタイヤを落とすラインでバックダウンしてもコケないと思いますけどネ)
Jr.の動画を見てもわかりますが、上までクローリングで登れていたとしても、再発進ではまったく進めなくなる、ということが度々起こるのが「雨の日のヒルクライム」の怖いところです。
■グリップ力とトラクションの違いを理解しておこう
雨の日なら、さきほど登場した小さな溝でも十分過ぎるほど遊べますね。
まだ、このヒルクライムは難易度が低いですが、激しい場所になると上から下までこれくらいの段差の溝が延々続くヒルクライムなども珍しくありません。
そういう場合は、車高を上げ過ぎていない僕のような車はバックダウンも比較的同系車種を相手にした場合、有利になることがあります。
雨の日は、圧倒的にタイヤの優劣が出易いことは多くの方が体験済みだと思います。
晴れの日は、極端な話、スリックタイヤですら走れます。
しかし、雨の日は路面の泥をハネ飛ばしたり、路面にタイヤの突起物やブロックを積極的に突き立てることでトラクションやグリップ力を発生させるので、タイヤのパターンや溝の深さなどが非常に重要となってきます。
余談かもしれませんが、「グリップ」と「トラクション」の違いを説明しておきます。
グリップ力とはタイヤが地面に接地する際、滑らずにグリップを維持できる限界の動摩擦抵抗力のことを言うのですが、
トラクションというのは、車輪が路面に対して発生させる、牽引(駆動)力 すべてのことを言います。
つまり、「グリップ力」×「タイヤの回転数」=「トラクション」といえるのかもしれませんね。
(間違ってたらゴメンなさい)
ただ、これが単純にこの計算式で説明できないのが「泥ハケの性能によるトラクションの違い」ですね。
たとえばマッテレや、先ほども言ったジオランダーのようにシーランド比が低い(溝の面積が狭い)タイヤは、泥ハケに問題があることが多いので、グルッと一 周タイヤを回してきても、相変わらずタイヤの溝の中に泥が残っていることが多く、急激にグリップ力を失い、それに伴いトラクションも減少する・・・という 現象が起こります。
それに対して、スーパースワンパーなど「トラクションタイヤ」と呼ばれているタイヤは、泥ハケを優先して設計されたものは、グルッとタイヤを一周させると溝の中の泥がすべて排出されて次に地面に接地する際には「まっさらな状態」になっていることが多い。
特にトレッドの中央付近に近い部分のシーランド比が高いタイヤの方が、接地したトレッド全面に比較的にまんべんなく圧力がかかります。
「トラクションタイヤ」と同じククリで呼ばれているジープサービスの性能がイマイチなのは、このトレッド面の中央付近のシーランド比がやや低いからです。
本来なら、大きな溝が多いタイヤの側面に強い圧力をかけねばならないのが、タイヤの中央付近に大きな溝がないため、タイヤの中央部の泥ハケがほとんどな く、中央部の面積が増えるため、効果的にタイヤ全体に圧力を分散できないため、「トラクションタイヤ」と言うにはやや物足りない性能になってしまっている わけです。
性能としてはふた昔前のジープサービスを語っても仕方がないので、話を元に戻しますが、雨の日のクロカンは「グリップ力をいかにして得るか」ということと、「トラクションをいかにして稼ぐか」ということを考える必要があります。
■雨の日ならではの走り方
たとえば、雨の日ならではの走り方としてはこんなものがあります。
最初から積極的にタイヤを空転させ、路面に残った泥を排除させることを狙い、2度目の走りで一気に通過させるような走らせ方。
これはヒルクライムなどで比較的多く使います。
ただ、ひとつ注意せねばならないのが、「登れないポイントで余計に掘り返さない事」です。
泥を跳ね飛ばすからだ、と言っても、それは次走る際に、坂の途中でもトラクションをなるべく多く稼ぐためなので、肝心な所で自分のタイヤで大きな段差を作ってしまうとそれが原因で登れなくなることも多いのです。
ですので、坂の途中では比較的、派手にタイヤを空転させながら前進させるのですが、肝心なポイントまで登ってきたらアクセルをオフにしてタイヤと車は慣性だけで当てるのです。
上級者になると上手に当てることで、残った段差などをタイヤでならしながら次に進む時のために耕しておいたり、
何度も前後に車を往復させながら、段差があるところなどで敢えてタイヤを空転させ、ギャップをなだらかにして次のアタックに備えることもありますね。
これなどはスノーアタックなどで比較的一般的に使われている手で、トラクションの悪いリーフ車などでフルアクセルで車を前進させようとすると、ホーシングがジャダーを起こすことで、路面を凸凹にさせやすい。
そこで、次のアタックに備え、わざと凸凹になった路面の上を前後に往復させることでなるべく平にならして、次に走るときに加速させやすくする。
後、雨の日に限らずかもしれないが、タイヤの向きを車に対して真っ直ぐにさせるだけでより多くのトラクションが稼げることが珍しくない。
泥の中や、ぬかるんだ斜面を走っているとき、ステアリングを右か左に切った状態であがいている人が、
タイヤの向きを真っ直ぐにしてやり、アクセル操作に集中した途端に前進出来るようになることは珍しくない。
要するに、タイヤはどちらかに切っているだけで車が動く抵抗になっているのだ。
「ステアリングは真っ直ぐにさせている方が車は前進させ易い」ということは、非常にいろんなシーンで活きてくるので必ず頭の片隅に入れて走った方がいいだろう。
(もちろん、牽引時もタイヤの向きが真正面を向いていた方が少ない牽引力で牽引出来る)
よくトラクションタイヤを履いている人に見かけることに、タイヤのショルダーを効かせようとしているのだろうが、やたらとステアリングを左右に高速に振り回す人がいます。
ソーイングと言われる技で一応、効果はあるのですが、路面を荒らしたり、再現性や確実性があまりない技なので、僕はあまり好きじゃありませんね。
僕はそんな不確実な技を使うよりは、走る度に、その次に走った際に有利になるような布石が打てる走らせ方をする方が好きですね。
あと、雨の日ならではの走りで、かなり上級者向けの技に「ムーンウォーク」と呼んでいる技があります。
■上級者向けの高等テクニック「ムーンウォーク」
これは、正直ここで公開してもいいのか迷う技ではあるのですが、敢えて公開しちゃいましょう。
これは知らずに勝手に使っていることがあると思うのですが、車は後退しているのだが、タイヤは逆に前転している・・・という状況がありますよね。
溝が深いヒルクライムなどで対角線にタイヤが浮きながらバックするときや、路面のミューが極端に低い雪面や雨の日などのバックダウンでよく起こる現象です。
クロカンの基本では、バックダウンするときはバックギアに入れて、タイヤを回しながらバックすること、と教えられると思うのですが、
タイヤをわざとバックダウン中に前転させることで、後退する速度を落とすというかなりの”荒業”です。
これには本当に多くの注意点があり、特に下がった先に障害物があったり、急にグリップが回復されるポイントに差し掛かった際などには、ドライブシャフトやデフなどの駆動系を破損させる恐れがあります。
MT車の場合、「やばい」と思ったらクラッチを切り、駆動を切って路面からの逆向きのトルクと駆動系から伝わる正方向のトルクがぶつからないようにすることは出来るのですが、当然完全に遮断するにはタイムラグが発生することがありますし、
AT車のようにニュートラルに入れても実際にニュートラルになるまではサーボの動作までタイムラグがあるので「やばい」と思った瞬間に操作をしても、もう遅いってことが多いと知っておいた方がいいだろうと思います。
つまり、このムーンウォークという技を使う際には、予め走っている地形を熟知しておき、タイヤが引っかかってしまう前には駆動を切るか、逆にギアをリバースに入れる必要があるわけだ。
■雨の日の走りは、晴れの日の練習の総決算
雨の日の走りは、本当にしっかりとした下見や、走行プラン、繊細な操作、不測の事態が起こった際の反射的なリカバリーなどが要求される。
さらにタイヤの選択、装備の選択、それからそれら装備品などを正しく使いこなせるスキルなども必要となってくる。
もっと細かいところで言うと、雨の日は足元が極めて悪いので靴の選択や、アクセルペダルやブレーキペダル、クラッチペダルが泥で滑らないように細工をしておくとか、ステアリングホイールなども滑らないように工夫をしておいた方が良い場合が多い。
車の操作や装備は雨の日ならではの物も多いが、基本的に雨の日の走りというのは晴れの日、どれだけ濃密な走り込みをしているかどうかで大きく安定性や走破性、できることの可能性が変わってくると思っている。
「晴れの国」に住んでいると、どうしても雨の日に稼げる経験値は稼ぎにくいものなのだが、雨の日は積極的に走りに出てはいかがだろうか?
■おまけ
これにはちょっと笑わせてもらいました(笑