2012年10月23日火曜日

雨の日のクロカンテクニック


雨の日のクロカンテクニック

本来なら、グランドアンカーの記事を書きたいと思っているのですが、今日は雨が降っているってこともあるのと、画像がないので、今回は前々からまとめたいと思っていた雨の日のクロカンテクニックについてお話したいと思います。








■雨の日は全く別

僕は以前から、「雨が降ったら走りに行こう」って思うことが多くあります。

理由はカンタンで、同じ場所を走っていても雨の日は晴れの日と全く違うからです。


僕がこういう風に思うのは、「岡山」の風土にもかなり影響を受けていると思います。

なんせ、岡山県南部は、香川県と並んで日本全国で最も晴れの日が多いことで知られているからです。


ちなみに岡山県のキャッチコピーに「晴れの国 岡山」ってのがあります。


ということで、岡山県の南部に住んでいると、自然と雨の日の経験値は少なくなるのです。

それに追い討ちをかけるのが、走ることが出来るポイントの地質の問題。

岡山県の東部や兵庫県の方面に走りに行くと、石灰質の場所が増えてきたり、北部に行くと、甲子園の土でも知られている「真っ黒な火山灰」が増えてくるので、雨の日はビックリするほどグリップしなくなるのですが、

岡山市内唯一のコースのスポーツランド岡山や、以前は走れた神石、広島県のテージャスランチ、広島市のタマダなどは基本的にマサ土なので、雨の日も他の地質と比べたらそれほど極端に走りにくくならないんです。

ちなみに神石というのはこんな場所

その1
その2

見事なマサ土ですね(^^


マサ土の特徴としては、晴れていたらほぼ最強のグリップ力を発揮してくれるということは間違いないのですが、雨の日、泥状になったとしてもそれほど重くならないとか、タイヤの溝に詰まった泥のハケが元々かなり良いなどというものがあります。

ちなみに英語で「Buckshot」(バックショット)のことをショットガンの玉の中でも大粒の散弾(鹿玉)のことを言いますが、四駆用語ではタイヤで吹き飛ばした泥の塊のことをいいます。


マサ土は雨の日も、他の土質や岩などが露出している地形と比べたら比較的グリップ力もトラクションも発揮させやすいのだが、それでも舐めてかかると自殺行為になります。


以前、CCV誌でジオランダーのことを「あれはオールテレーンだ」と評したことがあったが、確かに雨の日に履いているのを観ていると、トラクション、グリップともにかなり不足していることに気が付く。

「雨の日」は、晴れの日とは全く違うので、走り慣れている場所ではなんでもないことが、雨が振った途端に全く出来なくなったり、危険度が急に跳ね上がることも珍しくない。

だから、雨の日に走るのであれば、タイヤも含めて装備など全て万全の準備をすることから始めないといけないと思っています。




■雨の日:運転面での違い(ヒルクライム)

ディーゼルの重量級の四輪駆動車の場合、グリップの良い日は基本的にクローリング中心だと思っているのですが、雨の日になるとクローリングにこだわっていたのではお話にならないことが多くあります。

ですので、難所を走る場合は基本的にローセコ(Lowレンジと2速)を多用し、タイヤをぶん回すような使い方をすることになります。

雨の日のグリップ力の低下や、トラクションの低下は、車の重量がより重い方が顕著になります。

私のクロカンは自走力に頼らないので、実際のところあまり問題はないのですが、重量物(レスキュー用品)を大量に載せすぎると、晴れの日以上に、雨の日はトラクション不足などに悩まされることになります。


走り方ですが、私は特に雨の日は一回で走破させることにはコダワリません。

最初は、ローロー(Lowレンジと1速)でゆるゆると這わせておいて、少しずつ前進距離を伸ばしていく・・・という走らせ方をします。

例えば、全長20mほどのヒルクライムの場合は、最初のアタックでは3m、次は4m、その次は5m・・・という風に少しずつ到達距離を伸ばしていくわけです。

当然、登った分は必ずバックダウンしなければいけないため、重要度というか注意点は「バックダウンするとき」ということになります。


最近の雨の日のクロカンで言うと9月30日のスポーツランド岡山でのクロカンがありましたが、例えばこのシーン、皆さんはどう思いましたか?



実はこの数台前、SJ30がこのヒルクライムでリアタイヤが足払いをされて転倒しているのですが、


重心の低いSJ30でも転倒する可能性のあるヒルクライムです。


雨の日、なぜ怖いのかというと、普段なら完全グリップで降りてこれる処もグリップが全く効かないので、勢いがついてバックしてしまうため、晴れの日ならな んでもないギャップや段差でもこのように引っかかったり、派手に落ち込み、足払いを受けたみたいになり「コロリ」といくことが多いからですね。

ですので、僕がこの斜面を登るのであれば、このギャップがあるところまでなら何度でも安心して攻めますし、バックダウンもします。

ですが、このギャップがあるところを境に、上では絶対舐めた走らせ方はしませんね。


以前のブログでも書いたことがあるのですが、僕が運転しているとするなら、坂の上でたとえ車が止まっていたとしても、絶対車を斜面の途中、(しかもこのギャップがある上)で止めたりはしませんね。

ですので、以前のブログでも「オカマを掘ってもいいくらいのつもりで登りきれ」って言っているわけです。

重量車の場合、転倒で被る被害は軽量車の比じゃないですから。

慎重になるのは当然です。

(これはおそらくですが、僕の車なら溝の底にタイヤを落とすラインでバックダウンしてもコケないと思いますけどネ)


Jr.の動画を見てもわかりますが、上までクローリングで登れていたとしても、再発進ではまったく進めなくなる、ということが度々起こるのが「雨の日のヒルクライム」の怖いところです。


■グリップ力とトラクションの違いを理解しておこう

雨の日なら、さきほど登場した小さな溝でも十分過ぎるほど遊べますね。

まだ、このヒルクライムは難易度が低いですが、激しい場所になると上から下までこれくらいの段差の溝が延々続くヒルクライムなども珍しくありません。

そういう場合は、車高を上げ過ぎていない僕のような車はバックダウンも比較的同系車種を相手にした場合、有利になることがあります。

雨の日は、圧倒的にタイヤの優劣が出易いことは多くの方が体験済みだと思います。

晴れの日は、極端な話、スリックタイヤですら走れます。

しかし、雨の日は路面の泥をハネ飛ばしたり、路面にタイヤの突起物やブロックを積極的に突き立てることでトラクションやグリップ力を発生させるので、タイヤのパターンや溝の深さなどが非常に重要となってきます。


余談かもしれませんが、「グリップ」と「トラクション」の違いを説明しておきます。

グリップ力とはタイヤが地面に接地する際、滑らずにグリップを維持できる限界の動摩擦抵抗力のことを言うのですが、

トラクションというのは、車輪が路面に対して発生させる、牽引(駆動)力 すべてのことを言います。

つまり、「グリップ力」×「タイヤの回転数」=「トラクション」といえるのかもしれませんね。

(間違ってたらゴメンなさい)

ただ、これが単純にこの計算式で説明できないのが「泥ハケの性能によるトラクションの違い」ですね。


たとえばマッテレや、先ほども言ったジオランダーのようにシーランド比が低い(溝の面積が狭い)タイヤは、泥ハケに問題があることが多いので、グルッと一 周タイヤを回してきても、相変わらずタイヤの溝の中に泥が残っていることが多く、急激にグリップ力を失い、それに伴いトラクションも減少する・・・という 現象が起こります。


それに対して、スーパースワンパーなど「トラクションタイヤ」と呼ばれているタイヤは、泥ハケを優先して設計されたものは、グルッとタイヤを一周させると溝の中の泥がすべて排出されて次に地面に接地する際には「まっさらな状態」になっていることが多い。



特にトレッドの中央付近に近い部分のシーランド比が高いタイヤの方が、接地したトレッド全面に比較的にまんべんなく圧力がかかります。

「トラクションタイヤ」と同じククリで呼ばれているジープサービスの性能がイマイチなのは、このトレッド面の中央付近のシーランド比がやや低いからです。



本来なら、大きな溝が多いタイヤの側面に強い圧力をかけねばならないのが、タイヤの中央付近に大きな溝がないため、タイヤの中央部の泥ハケがほとんどな く、中央部の面積が増えるため、効果的にタイヤ全体に圧力を分散できないため、「トラクションタイヤ」と言うにはやや物足りない性能になってしまっている わけです。


性能としてはふた昔前のジープサービスを語っても仕方がないので、話を元に戻しますが、雨の日のクロカンは「グリップ力をいかにして得るか」ということと、「トラクションをいかにして稼ぐか」ということを考える必要があります。


■雨の日ならではの走り方

たとえば、雨の日ならではの走り方としてはこんなものがあります。

最初から積極的にタイヤを空転させ、路面に残った泥を排除させることを狙い、2度目の走りで一気に通過させるような走らせ方。

これはヒルクライムなどで比較的多く使います。

ただ、ひとつ注意せねばならないのが、「登れないポイントで余計に掘り返さない事」です。

泥を跳ね飛ばすからだ、と言っても、それは次走る際に、坂の途中でもトラクションをなるべく多く稼ぐためなので、肝心な所で自分のタイヤで大きな段差を作ってしまうとそれが原因で登れなくなることも多いのです。

ですので、坂の途中では比較的、派手にタイヤを空転させながら前進させるのですが、肝心なポイントまで登ってきたらアクセルをオフにしてタイヤと車は慣性だけで当てるのです。

上級者になると上手に当てることで、残った段差などをタイヤでならしながら次に進む時のために耕しておいたり、

何度も前後に車を往復させながら、段差があるところなどで敢えてタイヤを空転させ、ギャップをなだらかにして次のアタックに備えることもありますね。


これなどはスノーアタックなどで比較的一般的に使われている手で、トラクションの悪いリーフ車などでフルアクセルで車を前進させようとすると、ホーシングがジャダーを起こすことで、路面を凸凹にさせやすい。

そこで、次のアタックに備え、わざと凸凹になった路面の上を前後に往復させることでなるべく平にならして、次に走るときに加速させやすくする。


後、雨の日に限らずかもしれないが、タイヤの向きを車に対して真っ直ぐにさせるだけでより多くのトラクションが稼げることが珍しくない。

泥の中や、ぬかるんだ斜面を走っているとき、ステアリングを右か左に切った状態であがいている人が、

タイヤの向きを真っ直ぐにしてやり、アクセル操作に集中した途端に前進出来るようになることは珍しくない。

要するに、タイヤはどちらかに切っているだけで車が動く抵抗になっているのだ。

「ステアリングは真っ直ぐにさせている方が車は前進させ易い」ということは、非常にいろんなシーンで活きてくるので必ず頭の片隅に入れて走った方がいいだろう。

(もちろん、牽引時もタイヤの向きが真正面を向いていた方が少ない牽引力で牽引出来る)


よくトラクションタイヤを履いている人に見かけることに、タイヤのショルダーを効かせようとしているのだろうが、やたらとステアリングを左右に高速に振り回す人がいます。

ソーイングと言われる技で一応、効果はあるのですが、路面を荒らしたり、再現性や確実性があまりない技なので、僕はあまり好きじゃありませんね。


僕はそんな不確実な技を使うよりは、走る度に、その次に走った際に有利になるような布石が打てる走らせ方をする方が好きですね。


あと、雨の日ならではの走りで、かなり上級者向けの技に「ムーンウォーク」と呼んでいる技があります。


■上級者向けの高等テクニック「ムーンウォーク」

これは、正直ここで公開してもいいのか迷う技ではあるのですが、敢えて公開しちゃいましょう。

これは知らずに勝手に使っていることがあると思うのですが、車は後退しているのだが、タイヤは逆に前転している・・・という状況がありますよね。

溝が深いヒルクライムなどで対角線にタイヤが浮きながらバックするときや、路面のミューが極端に低い雪面や雨の日などのバックダウンでよく起こる現象です。

クロカンの基本では、バックダウンするときはバックギアに入れて、タイヤを回しながらバックすること、と教えられると思うのですが、

タイヤをわざとバックダウン中に前転させることで、後退する速度を落とすというかなりの”荒業”です。

これには本当に多くの注意点があり、特に下がった先に障害物があったり、急にグリップが回復されるポイントに差し掛かった際などには、ドライブシャフトやデフなどの駆動系を破損させる恐れがあります。

MT車の場合、「やばい」と思ったらクラッチを切り、駆動を切って路面からの逆向きのトルクと駆動系から伝わる正方向のトルクがぶつからないようにすることは出来るのですが、当然完全に遮断するにはタイムラグが発生することがありますし、

AT車のようにニュートラルに入れても実際にニュートラルになるまではサーボの動作までタイムラグがあるので「やばい」と思った瞬間に操作をしても、もう遅いってことが多いと知っておいた方がいいだろうと思います。

つまり、このムーンウォークという技を使う際には、予め走っている地形を熟知しておき、タイヤが引っかかってしまう前には駆動を切るか、逆にギアをリバースに入れる必要があるわけだ。


■雨の日の走りは、晴れの日の練習の総決算

雨の日の走りは、本当にしっかりとした下見や、走行プラン、繊細な操作、不測の事態が起こった際の反射的なリカバリーなどが要求される。

さらにタイヤの選択、装備の選択、それからそれら装備品などを正しく使いこなせるスキルなども必要となってくる。

もっと細かいところで言うと、雨の日は足元が極めて悪いので靴の選択や、アクセルペダルやブレーキペダル、クラッチペダルが泥で滑らないように細工をしておくとか、ステアリングホイールなども滑らないように工夫をしておいた方が良い場合が多い。

車の操作や装備は雨の日ならではの物も多いが、基本的に雨の日の走りというのは晴れの日、どれだけ濃密な走り込みをしているかどうかで大きく安定性や走破性、できることの可能性が変わってくると思っている。


「晴れの国」に住んでいると、どうしても雨の日に稼げる経験値は稼ぎにくいものなのだが、雨の日は積極的に走りに出てはいかがだろうか?




■おまけ

これにはちょっと笑わせてもらいました(笑

超・初心者向けクロカン上達法


超・初心者向けクロカン上達法

先日、心ならずもクロカン初心者に教える機会があったので、ちょっと記事にしたいと思います。

まずここでいう「初心者」とは、一般道は普通に運転出来るのだが、オフロードではほとんど運転経験のない人、ということにしておいてください。

僕が教えることが出来るのはあくまでもディーゼル車で、マニュアルミッションに限られます。

ただ、「スタック時の対応」については全車種共通なので、予めご容赦願います。


■教えると言っても・・・

僕が教えるのはあくまでも「練習方法」と「スタック時などの対応」だけです。

ないのは「スタック時などでのアドバイスや誘導」ですね。


スタックと言っても、完全にハマりこんでしまうようなヘビーなものではなく、ちょっと障害物を通過出来ないなぁとか、溝を超えれないなぁと小停止してしまうような小さなものまで含まれています。


流儀やそのグループなどのしきたりみたいなものもあるので、特定の団体などを悪く言うつもりはないのですが、

僕としては「そこは右だ!」とか「このラインを通れ」みたいに誘導することはしたくありません。


先日、アイアンバールカップの話などもしましたが、僕はあの競技の全てに心酔していたってわけではなく、「イマイチ自分たちの流儀に合わないんだよな」って思っていたのが、「バディ」の存在です。つまり二人一組という規定です。

運営上、スムーズに進行させねばならないなどの理由があったのかもしれませんが、普段の自分たちのクロカンに「バディ」はいません。


よほどのことがない限り、自分一人でほとんど全てをこなしますし、他人に手も貸してもらわないですし、ましてやアドバイスなんて聞く耳を持たないので、

僕がハマってジタバタしているとき、何も知らない人が横から「ああしろ、こうしろ」ってアドバイスしてくれたり、「手を貸しましょうか?」などという申し出を受けても綺麗に受け流していました(笑)。


僕のブログをここまで読まれている方はなんとなくご存知かもしれませんが、僕が現場でアドバイスしないのは、「アドバイスされる側は、アドバイスされてもちっとも腕が磨かれることがないから」です。

ですので、先日の初心者向けの講習会で、モーグルが抜けれずに困っている顔をしている人がいたとしても、

「なんで車が前に進まないかわかる?」って聞いて、「分からない」と言ったら、「ほんじゃ、車から降りて状況を確認しましょう」って言わせていただきました。



■自分の目で見て確認し考えて初めて上達する

よく他の団体などがクロカンしている動画などをYouTubeなどで見ていると「そこは右だ!」とか「その段を上がったら左だ!」などと誘導している風景をよく見ます。

・・・で、よく思うのですがアレって何かあったとき大丈夫なの?ってことなんですよね。

まぁ、それはそこ、日本人同士なので誘導したことが原因で何か事故などが起こったとしても問題が起こることはほとんどないとは思うのですが、

最近は目に見えない反日勢力がやたらと増えてきているので、今までみたいになあなあだと怖いなぁと思うようになりました。

実際、僕のビジネスの現場でも友人の中には極めて悪質なトラブルに巻き込まれるケースが激増しているので、それが趣味の世界にまで及んできた場合、非常に怖いと思ってます。

例えばですが、ヒルクライム中に誰かを誘導していたとして、ドライバーが操作を誤り、そのまま坂を転げ落ちて車は大破、ドライバーは死亡。残された家族がヒルクライム中に誘導していた人を損害賠償請求で訴える・・・ということも十分に考えられることなのです。


ここまで極端なケースじゃないとしても、クロカン時に外部からの誘導っていうのを無条件に鵜呑みにして信じるのは危険過ぎるというか、自分の身を守るのに無責任過ぎると思っています。


「クロカンは大人の遊びだ」とか「クロカンの基本は単独行」と言っているのも、クロカンの現場で何かやらかしたとしても、責任を取るのは自分自身だし、誰かに責任に擦り付けるようなものではないからです。

(以前、”オシメの取れた大人のクロカン乗りになろう”って言われてた方が昔おられましたね)


このような「責任の所在」のような問題だけでなく、「クロカン乗りとしての腕を磨く」ということを少しでも考えてあげるのであれば、僕は「外部からの誘導」や「アドバイス」は不要だし、かえって邪魔だと思っています。



■自分の頭で考えてもらうのが基本

旧日本帝国海軍、連合艦隊司令長官の山本五十六の言葉に、

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」

というものがあります。


これはいかにして部下にやる気をもたせ、指導していき、スキルを伸ばしていくのかを端的に表した言葉として有名なのですが、”クロカン”の現場には上司も 部下もありませんし、皆、”自分で自分のことは責任がとれる社会人”(そういや一部違うのがいるなぁ)というククリなので、基本的に上下関係もないと僕は 思っています。


だから、「指導してやる」って考え方は間違っていると思うし、「やる気がない人をやる気にさせる」必要もないわけです。(クロカンを辞めたければ勝手にやめればいいだけ)


■「やってみせる」重要性

この言葉でまず使えるのは「やってみせる」という点です。

例えば、自分もそこに車を持ち込んでいて、先行しているのであれば見本を見せることはできますよね。

アイドリングのクローリング程度で通過出来る地形なら、自分がまず見本でキッチリやってみせ、後からくる車にも同じようなライン取りが出来るかやらせてみればいいでしょう。

僕が「改造し過ぎない方がいい」というのも、こういうときに自分の車の戦闘力が高すぎると、後からくる人が最初から思考停止してしまったり、戦闘意欲が消滅してしまうからです。


それから、たとえ一発で通過出来ないとしても、それは全く問題ありません。

というのも、僕はトライアル的な走りが必ずしもクロカンに最適な走り方だとは思っていないので、一発できれいに走り抜けることにあまり意味や価値を感じてないからです。

後から付いてくる人に見せるべきは、どちらかというとこちらの姿勢というか行動ですね。

地形の情報がイマイチ掴めていないのであれば、車から降りて地形や車の状況を確認してみます。

それからパッと走行プランを考え、出来れば後ろの人に「こういう風に走る」というのを宣言してみるといいでしょう。

このように観察(インスペクション)を行う方法以外にも、数回、地形に車を当てながら地形を探り、少しずつ前進距離を伸ばしつつ最終的に走破(引破)させるという方法を取ることもあります。

初心者のうちは、特にこの「何度か走りながら少しずつライン補正をしていく」という技が未熟なことが多いので、その見本を見せてあげるわけですね。



■ライン補正でよく使う技

これは余談かもしれませんが、ライン補正でよく使う技を少し説明します。

まず、フロントタイヤを横方向に動かしたい場合ですが、これは前後に30cmも動かすことが可能なら簡単に行うことが出来ます。



0:15~0:45くらいの間に使っている技ですが、このような感じに据え切りを極力使わず車の向きをわずかな前後の動きで変えていくことが可能です。

なぜこんな技を身につける必要があるのか?ですが、これはすかさずクロカンの現場で非常によく使う技術だからです。

具体的に言うと、バックする余裕がほとんどない処で止まってしまって再発進しなければいけないときなど、この技を使いこなせない人は慌てふためきめちゃく ちゃな操作をしてしまい、逆に状況を悪化させたり、後ろの木にブチ当てたり、谷に落としてしまい転倒・・・みたいなことも非常に多くあるのです。

そこで普段から、動画のような非常にカンタンな地形で練習しておくわけですね。


この技のもうひとついい処は、「1つ1つの穴ボコやオブスタクルをクリアしていく楽しみ」が味わえるからですね。

たとえば、ここなどはスポラン岡山の林間コースの1つですが、



この日などはグリップが良いので勢いつけてバ~っと走ってしまえばラクに登る処を、わざわざオープンデフでしかも極力エンジン回転数を落とし、速度もなるべく抑えて登らせているのです。

これはJr.の動画ですが、一発で走破させることにコダワリはないので僕と同じようにわざと走り難いラインなどを選んで走ってますね。


ラインには3つの種類があります。

1つは、「絶対走破出来ないライン」

2つは、「確実に走破出来るライン」

そして3つは、「走破出来るかどうか微妙なライン」

この3つ目のラインを選んで遊べるようになると、クロカンは急に面白くなると思います。

それからもうひとつ言っておかねばならないのが、「バックしつつ、狙ったラインにタイヤを乗せる」という操作方法を練習する機会が、これらの走り方では非常に練習し易いからです。

坂を下から登りながらだと登れないラインも、一度別のラインで登れるところまで登り、荷重をかけながらバックすることで、狙ったポイントにタイヤを持ってくる操作をすることがよくあります。

この操作が、トライアルなど「バック厳禁」という競技をされている方が苦手としている技ですね(なんせ普段の練習で”バックしない”ですから)

バックするからこそ、クロカンの幅は広がることがあるってことは、せめて普段の練習時くらいには覚えておいてもいいんじゃないかと思いますね。

あと、「据え切りも極力させない」というためにも前後に車を動かす操作は重要になってきます。

フロントが坂の上を向いている状況ならそれほど神経質になる心配はありませんが、

フロントが坂の下に向いている状態や、フロントタイヤが溝の底に落ちている状態などでの据え切りは厳禁です。

フロントタイヤに荷重が掛かっている状態でステアリングを切るということは、タイヤの損耗など比べ物にならないほどフロントデフ、ドライブシャフト、キングピンベアリング、操舵系のロッドやジョイント、ステアリングギアボックス、パワステポンプなどに負担をかける。

僕も一度、某山の坊主V字と呼ばれているポイントでステアリングのジョイントが外れビックリしたことがあった。

その時から「絶対山で据え切りはしないようにしよう」と思ったものだ。(この時は単独行だったが応急処置して自走で帰り、次の日はちゃんと仕事にも行った)


何度も言っているが、クロカンでは自走で帰ることが目的のはずだし、壊しに来ているわけじゃないはずなので、車を労わりながら走る操作はなるべく早いうちに学んだ方がいいだろうと思っている。

先日も言ったが、車を壊さずに(傷めずに)走れる技能が身に付けば、その分、メンテの量も少なくすることが出来るわけだし、有料コースのコース使用料なども払いやすくなるでしょう。



■「させてみる」重要性

ちょっと脱線してしまったので元に戻しますね。

先ほどは、自分が先行して後続に走りを見せる場合の話をしましたが、今度は実際に初心者などに走ってもらう際のお話をします。

先ほどの山本五十六の言葉で使えると思うのは「させてみて」という点です。

スタックして脱出させる時も、外部からやぁやぁ言うのではなく、ハメた当人に状況確認させる、つまり「させてみる」。

そこからの脱出プランも自分で立てさせてみる、つまり「させてみる」。


スタックには至らないのだが、なかなかポイントを通過出来ないときも、一旦車から降りて、自分の目で地形を確認させ、自分の頭で走行プランを立てさせ、そして実行させ、そのプラン通りに通過出来たかを検証させる。

俗に言うところの「PDCAサイクル」というヤツですが、これをキッチリとやってもらうわけです。




極論してしまえば、要はこれだけですが、自分自身が走る場合も、このPDCAサークルをキッチリ回せる人と回せない人とでは(特に時間を経ると)大きな差となって現れてきます。

僕も、もう20年近くもクロカンをしていると、随分昔から走っているわりに、ちっとも走りが進歩してないって人を多く見かけることがあります。

まあ、クロカンはプロスポーツじゃないですし、金儲けの手段でも何でもないので、それぞれの方がそれぞれ楽しみたいことだけしてればそれでいいのですが、

僕としてはクロカンするなら、どうせなら上手くなりたいというただその一点のみが目的なので、他人の走りもやっぱりそういう視点で見てしまうんですね。



初心者向け練習メニュー

先程、「ディーゼル車でマニュアル車のことしかわからない」と言いましたが、最近はAT車しかラインナップにない車も多くありますし、

たまたま手に入れた車がAT車だった(僕も最初はそう)ってこともあるので、本来ならATの練習法も書かねばならないのですが、ひとまず最初はMT車の練習法からお伝えしたいと思います。

まず、ディーゼル車とガソリン車の違いですが、(極めて古いガソリン車などでは別かもしれませんが)圧倒的に「粘る」のがディーゼルエンジンの特徴です。

ですので、ディーゼル車の練習に混じってJA11などの小排気量ガソリン車でギア比もSJ30のファーなどを入れている程度のジムニーなどではすぐクラッチから煙を吹き上げてしまうことも(汗)

ということで、ここではジムニーのお話はしてませんのでご容赦を(笑)


・初心者にしてもらう練習その1:エンジンを粘らせる練習

僕の場合、コースに入ってもらう前に練習してもらうことがあります。

それが、「エンジンを極限まで粘らせる練習」です。

これについては先日書いた記事にも少し載せてますので、そちらもぜひご覧ください。

「エンジンを粘らせること」をまず練習してもらうのは、実際にコースなどに入った際に、アクセルペダルを踏みすぎることによるトラクションのロスを抑えることもありますが、踏みすぎによる転倒や車両の破壊を抑える効果を考えてのことです。

車が壊れる際、もっとも多いのが「アクセルを踏んだ状態」ですよね。

つまり、アクセルを踏まなければほとんど車は壊れることはないってわけです。

ただ、当たり前の話ですがアクセルペダルを踏まなければ車は前進しませんし、クロカンそのものが成立しないので、最終的には踏むこと(アクセルワーク)も覚えなければいけませんが、

クロカンのアクセルワークというのは、僕が思うには優先順位はかなり後の方なので、最初から学ぶ必要はないんですね。

また、ディーゼル車でそこそこのギア比の車ならかなりの地形まで本当にアイドリングのままだけでクローリングで通過させることが可能です。

僕に言わせると、初心者のうちはアクセルペダルを踏む必要はないですし、踏むのは1日早い(笑)なので、先にエンジンを粘らせることを覚えた方が役に立つことが多いのです。

ちなみにエンジンを粘らせる練習は全くの平地から始めてもらって結構です。

クラッチを繋げたままで、ブレーキを踏むことで簡単にエンスト付近まで回転数を落とすことが出来るので平地でOKです。

次に、ほんの少しの段差を登らせてみましょう。

段差としてはこれくらいあれば十分過ぎるほどです。



この半分の高さでもいいので、なるべくアクセルペダルを踏まずに通過してみてください。

それができたら、今度は少しだけブレーキペダルを踏んでみて・・それが出来たらちょっとだけ強めにブレーキペダルを踏んでみて・・この繰り返しで、いつでもエンジン回転の最低のラインを引き出せるようにしておきましょう。

エンジン回転がエンスト寸前まで落ちた際、エンジンが「ガタガタ」と派手に揺れることがあります。

その揺れが脚回りを通してタイヤにも伝わるのですが、実はコレが良い働きをしてくれることがあり、絶妙なグリップを生み出すことがあるのです。

この極めて回転数が遅く、回転速度が極めて不定速な状態が実はMT車の最大のメリットだと僕は思っています。

AT車でも、似たタイヤの動きはポンピングブレーキで多少は真似出来るかもしれませんが、それだとタッピング(軽くポンポン叩く操作)ブレーキと変わらないので、駆動系などに負担をかけるので特に素人に教えるのは怖い技なんですよね。

ですので、ブレーキチョーキングなどのデフの差動をブレーキで殺す技というのはある程度クロカン出来るようになってから教えるようにしています。

(先日のクロカン初心者講習会でも教えませんでした)


あと、エンジンを粘らせる練習をする上で避けられないものに「エンスト」があります。

ですが、僕はクロカンをする上でエンストして何が悪いの?ってスタンスでいます。

エンストするということは積極的にエンジン回転の一番美味しい処を使おうとしていたという証みたいなものですし、エンストしたから下手くそとは思っていません。

(これが大排気量大トルクディーゼルエンジン+極低速ギア比の車だと話は別かもしれませんが・・)

たとえ坂の途中でエンストしたからといっても、再発進時のアクセル&クラッチワークに気をつけて、極力ゆっくりタイヤを廻して発進することさえ覚えてしまえばそれほど実害はないからです。(逆に楽しみが増えるくらいか?)

ちなみにですが、「どうしても後ろに下がれない」って場合は、セルスタートという方法があります。

これはクラッチを繋いだままエンジンをスタートさせ、バッテリーとセルモーターの回転力だけで車を前進させるという禁断の方法です。

ただ、この方法はフライホイールなども含め、極めて車にはよくないことなので「こういう技術があるのだ」くらいに思っておいてもらって結構だと思います。

(実際僕が過去に使ったのは、数センチ後退したら転倒しそうだった崖の上で一度使っただけだ)


・初心者にしてもらう練習その2:ステアリング操作

オンロードでのステアリング操作と、オフロードでのステアリング操作はかなり異なります。

まず、ハンドルは基本的に(MT車だとしても)左右の手でステアリングを握ること。

この時、親指は絶対巻き込まず、伸ばしたままにしておきます。

これはなぜかというと、重ステの車ならより顕著なのですが、地形からのキックバックでハンドルが強制的に廻された場合などに、ハンドルのスポークに親指が当たり、下手をすると骨折することが起こるからです。

また、クロカン走行時には基本的に腕はクロスさせません。

これも理由は同じく、強烈なキックバックから腕を保護するためですが、クロスさせる操作はステアリング操作をかなり遅くさせるという理由もあります。

そのように書くと中には、「ハンドルを何周も急いで回さないといけない時、それじゃ対応出来ないじゃないか!」って思う人がおられるかもしれませんが、

ディーゼルの四駆でそのようなハンドル操作をしないといけないってことは単純にスピードの出しすぎなんです!!

「ステアリング操作が追いつかない」⇒「車の速度の出し過ぎ」⇒「ディーゼル車乗りとしては下手くそな証拠」

このことはしっかり覚えておいた方がいいと思います。


ステアリング操作は基本的に右手は1時の方向から5時の方向までの間。

左手はその反対に、11時の方向から7時までの間で行います。

横から見ていると右手が上下にしか動いてないので最初は奇妙な動きに見えるかもしれませんね。

ですが、ステアリングというのはほぼ唯一、車と運転手を直接つないでいる物ですので雑に扱わないようにしてください。


・初心者にしてもらう練習その3:ブレーキングの練習

これは一部、エンジンを粘らせる練習にもつながるのですが、僕が思うにクロカンで一番習得が難しいのはアクセル操作でもクラッチ操作でもステアリング操作でもなく、「ブレーキ操作」です。

なぜブレーキ操作が一番難しいのか?というと、ヒルダウン時などはこのブレーキ操作が上手な人と下手は人とで大きな差となって現れますし、上級者(と自分 で思っているであろう人)の中でも、明らかにブレーキングの練習などしたことがないって人も珍しくないほどこれまで脚光を浴びてこなかったスキルだからで す。


ブレーキ操作はまず、ほんのちょっとの段差を下ることから始めてみましょう。

まずはクラッチは切断したまま、なるべく一定の速度で降ります。

次に、同じ地形を下るのですが、今度は「可能な限り速度を落として降ってみてください」。

これはやってみるとわかりますが、かなりギクシャクしたブレーキングになってしまいます。

構造上の問題もあるので必ずしもジワ~ッと降りれるというわけではないのですが(特にFブレーキがドラムの三菱ジープなどは)、なるべくギクシャクした動きをせずに坂を下ることはクロカンの現場で非常に役に立つのでぜひ習得してください。

超・繊細なブレーキ操作を覚えると、まずはブレーキチョーキングなどブレーキを使ったデフの制動の技が上手くなります。

次にこれが特に重要なのですが「ヒルダウン」が圧倒的に上手くなります。

ヒルダウンなどをしていてよくあるのがこのように大きな段差をポテッと下るようなシチュエーションですが、ブレーキングの練習をしているとこれくらいの操作は可能になってきます。



この動画のJr.のヒルダウンですが、段差のギリギリ限界まで可能な限り速度を落とし、グリップする限界までグリップを拾って、最後はソフトランディングさせているのがわかると思います。

当日の動画に同じ地形を走っている同型車種もおられるので、違いがどれくらいあるかを見比べてみてください(笑)。


このように、ヒルダウンが上手くなっていくと、当然のことながらボディを痛めたり操舵系やサスペンションにダメージを負うことが少なくなっていきます。

これはかなり大きな段差なので降りた際にリアサスが派手に浮いてますが、ここまで大きな段差で最初から練習する必要はないので、タイヤ半個分程度の段差でもいいですし、傾斜が20度程度の緩い坂などを利用して反復練習をしてみてください。


・初心者にしてもらう練習その4:軽いキャンバー走行の練習

クロカン初心者のうちは、わずか20度ほど車が傾いただけでビビってしまうとか、30度くらいの斜面を登っていても「空しか見えなかった!」と言っているのを聞くことがありますが、

そういうのを聞くと「あぁ、自分もそういう時期があったかもなぁ」って思いますね。
(^^;


ですが、20度程度傾くというのは本当にクロカンの現場では日常茶飯事ですし、傾けながらではないと攻めれないラインなどもあるので、初心者のうちからある程度は傾きに対して免疫をつけてから走った方がいいと思います。

難所で思考停止してしまうと、大事故や大損害につながりますからね。


「キャンバーってどこにあるの?」って思われる方は多いかもしれませんが、これは探せば本当に沢山あります。

スポーツランド岡山に来られたことがある方なら分かると思いますが、広場内だけでも、「広場入口正面の斜面」、「小山の斜面」、「キャンプ場入口右側の傾斜」、「岩場下の斜面」、「看板の下の斜面」の5つがあります。

斜度は20度~40度以上と結構バリエーションに富んでいるので、練習に事欠くことは全くありませんね。

スポーツランド岡山をご存知でない方も、探そうと思えばいくらでも存在します。

走っちゃいけませんが、川原の斜面などもキャンバーの代表格みたいな地形ですし、山の通路は路面が一段低くなっていることが多いので、高くなっている側の斜面をキャンバーに見立ててやれば、いくらでもキャンバーを見つけることは可能です。

(だからこそ、キャンバー走行を身につけると走るポイントが劇的に増える)


キャンバー走行の注意点としてはとにかく「無理をしない」ということ。

そういえばJr.が40度傾けて喜んでいた記事をアップしてましたが、あれはコカす前兆ですね(汗)。

車には、本当に沢山の転倒パターンがあるのですが、それら全てが理解できていないうちから限界付近までやってしまうということは、そのうち必ずやらかすってことですから。

ですから、初心者のうちは無理せず、安全マージンを20%から30%は取っておくべきだと思いますね。

(車の横方向への転倒限界が45度なら、傾けても35度程度で辞めておくという感じ)

僕がブレーキングの練習からさせるのも、なるべくフルバケットシートを早い段階で入れることを勧めるのも、この「キャンバー」を安全に走れるようになってもらいたいからです。

というのも、特に重量級のディーゼル車は、転倒時のダメージが半端ない場合が多く、僕は基本的にディーゼル車で転倒前提のような走りはしない方がいいと思っています。


キャンバー走行の練習はなるべく低速で行いましょう。

特に注意すべきは、荷重がより多くかかる谷側(下側)のフロントタイヤが通過するポイントです。

私の場合は、キャンバー走行時は最初からサイドブレーキをちょっと使い、速度を落とさせるようにして這っていることが多いのですが、急に「グラッ」っと車が傾く場合など、サイドブレーキを絞ってリアブレーキをタッピングしてやってもいいでしょう。
(これはランクルのみ。サファリには効きません)

山側のタイヤが浮くような地形は攻めないのが基本ですが、もし浮きそうな気がするのであれば、迷わず谷側にステアリングを切って、リカバリーしてください。

コカしたら本当になんにもならないですから。

キャンバー走行に慣れてくると、冷静に地形などの情報を汲み取りながら這うことが出来るようになってくると思いますので、焦らずに少しずつ、斜面の角度を上げていくといいと思います。


・初心者にしてもらう練習その5:バックダウンの練習

手頃な斜面を見つけてもらったら、今度はそこをローローで登ってもらい、頂上付近で一旦停止、次にバックギアに入れて同じラインをトレースしながらバックダウンしております。

これが出来るようになったら、今度はまっすぐ登るのではなく、斜めに登り、斜めに降ってみてください。

次に、同じ斜面を使い、まっすぐ登ったらバックダウンはクラッチを切ったまま真っ直ぐ降りてください。

その時は、ブレーキのみで速度調整をします。

それが出来るようになったら今度は斜めに登り、斜めに降ります。


よく、雑誌などでは「バックダウンはバックギアに入れてクラッチを繋げたままエンブレを効かせながら降りるんだ」みたいに言うものがあるのですが、

アレについて僕は非常に懐疑的で、実際のクロカンの現場ではクラッチを切ったままバックダウンすることや、バックダウンの最中で停止し、そこから再発進みたいなことも多いのでいちいちバックギアに入れると滑らかな操作の妨げになるんですよね。

それに、緩斜面でバックギアに入れてバックしたら、エンブレが効きすぎてつんのめっちゃったとか、急斜面ではバックギアに入れたものの、クラッチを繋ぐことはほとんどなく、ブレーキ操作だけで下っちゃったってことが結構あるからです。

バックダウンする際に、バックギアに入れておく必要は確かにあるのですが、転倒しそうになりリカバリーのためにアクセルを吹かさねばならない、というような状況になるのは基本的にスピードの出しすぎだということを覚えておいた方がいいでしょう。

ですので、「ブレーキングの練習」が先なわけですね。

何でもない斜面での練習が終わったら、今度はちょっとした溝のある斜面や、モーグル状の斜面などを利用して同じ練習をしてみましょう。



・・・ひとまずこれくらいが超・初心者向けの練習メニューと、スタック時などクロカン時の対応です。

実はここで書いている方法の多くはYouTube動画の中に残っているのですが、2012年の5月前半の動画の多くはJr.の練習の様子を撮っているので見てやってください。参考になるかもしれません。

ランクル70 屑鉄号’s channel



おまけ




こんなタイヤの修理方法があったんだ!とちょっとビックリ。

・・・岩場とかオンロード走っていてすっ飛んでいったスワンパーの爪を復活させたいな(w

クロカンが楽しくなるサスセッティングについて


クロカンが楽しくなるサスセッティングについて

今回はサスのセッティングについてお話したいと思います。

・・・ただし、僕の場合はちょっと普通の人から比べるとおかしいかもしれませんので、予めご容赦を(^^;

僕自身、かれこれもう20年近くもクロカンという遊びをしているのですが、それぞれの時期で考え方も変わってきているので、時の流れにそってお話したいと思います。



■クロカン黎明期
(1992~1994年頃)


僕も、クロカンを始めた当初は「やれ、ストローク」だの、「やれ、トラクション」だのと、いろいろ考えながら、毎週のようにリーフの組み換えとか、ショックの位置変更などやっていました。


最初は金がなかったということもあり、ランクルクラブの先輩方が大量に持っていた純正リーフなどをもらい、自宅の庭や先輩のガレージなどでガチャガチャ組 み直しては山に持ち込み、「トラクションが良くなった」とか、「ストロークが伸びた」などと一喜一憂しながら遊んでましたネ。

でもまぁ、結局オープンデフでATのランクル60というものがどうしても気に入らなかったので、最終的には前後デフロック付きでMTで、当時最軽量だったランクル70幌(PZJ70)に乗り換えることにしました。


余談ですが、オープンデフが気に入らなかったというのは、ひとつ理由があって、ランクル70系でオープンデフというのは、リアのホーシングがセミフロートになるのですが、

このセミフロートが曲者で、リアのドライブシャフトが折れたら、ドライブシャフトごとタイヤが抜けてしまう(大汗)

これは実際に目の前で恐ろしい風景を目撃したことがあり、リアにエアロッカーのデフロックを組んだ74が、ヒルクライムの途中、右側にガン!とコケた弾み でリアのドライブシャフトが折れて、反動で起き上がったのですが、そのままブレーキが効かなくなるので、坂を恐ろしい勢いでバックダウンを始めたことがあ り、後方で見ていた僕らは大慌てで逃げたということがありました。

で、当時僕が乗っていたのもオープンデフのロクマルで、構造が一緒だったので「これはイカン!」ってことになり、リアにLSDを付けているフルフロートのロクマルに乗り換えたということがありましたね。

(ちなみにセミフロートのサファリY60やジムニーなどはリアのドライブシャフトが折れてもタイヤが外れない構造になっているとか)


ランクル70幌に乗り換えた当時、周囲の人はほとんどリーフを社外製品に替えていたってこともあり、1年ほど純正をそのまま使ってましたが、今のオールドマンエミューに替えました。

丁度この頃が、リーフをあれこれと組み替えていた絶頂期で、毎週のようにイジってましたねぇ。



■トライアルを本気でやっていた頃
(1995~1998年頃)


二台目に乗ったランクル60の頃からタマダのトライアルに参加するようになりました。

PZJ70幌を買ったのは、ズバリ”トラ”で勝つためでしたし、実際、何度かは表彰台にたつことが出来ました。

当時は中型車で前後デフロックという車が少なかったということもありますけどね。

この頃は、フロントのウインチも取り外し、どちらかというとデフロックを入れたまま車を振り回すような運転をしてました。

(ある意味、高いギア費と比較的軽量なボディ、吹け上がりの軽い1PZだと正統派な走りかな?)


PZJ70を買って1年はノーマルのリーフスプリングをイジった程度で乗ってましたが、周囲がほとんどリーフを替えて車高を上げていくため、僕もあまり考えずリーフやシャックル・ショックなどを替えました。

当時、周囲のランクル乗りはリーフの破断や折れ曲がりなどが結構頻発していたので、「とりあえず頑丈なのがいい」ということで、豪州のアウトバックでガンガン使うことを想定されていたオールドマンエミューを組むことに。

ショックはランチョのRS9000を当初は愛用してました。(今、リアにくまれている黄色のショックが何だか分からない(汗))

新品リーフを組んだ当初は、今と比べると2~3インチほども車高が高かったですね。

トライアルに出ていた当時は結構、堅いセッティングを好んでいました。

というのも、トライアルの上級者クラスに出ていた車の多くは、結構つんのめるくらい堅いセッティングをしている車が多く(ジムニーベースですが)、どちら かというと、トラクションのなさはアクセルをガンガン踏むことで補うとか、障害物にタイヤを当ててジャンプする時、グニャグニャなリーフやコイルだとたち まち腰砕けになり、逆に走破出来ないことがあるってことがわかったからです。

そこで僕も今と比べると結構ガチガチのセッティングで乗っていた時期が5年ほど続きましたね。

・・・ですが、あることをキッカケにサスのセッティングに対し、大きく変わっていく出来事がありました。


■クローリングとキャンバー走行主体のクロカン走行
(1999年~2002年頃)


トライアルに出なくなり始めた頃、ランクルを極めて上手に扱う人が身の回りに多く出てくるようになりました。

ただ、僕が扱っている高いギア比でトルクの細い1PZ搭載車ではなく、例えば3B型エンジン(古くからランクルに乗っているB型の直系エンジン)や、 4.2リッターの1HZ、13B-Tというような、エンジンの粘りが強く、またミッションもH55-Fというトラック用のミッションが載っているためギア 比が低く、クローリング主体のクロカンが極めて得意な車たちでした。

また、当時、TJラングラーなど、極めて走破性が高い中型車などがで始めていて、自走だけでは絶対に敵わないということが多くあったということもありました。

そこで、車の扱い方をほとんど180度変えることにしました。

これまではデフロックを入れて振り回すような走りがメインだったところを、基本的にオープンデフで普段はクローリング中心に這い回るような走り方に変え、がつんがつんとアタックしないといけないような地形ではさっさとウインチで引っ張るような走り方に変えていきました。

これが今から10年ほど前のことでしたね。

これによっていくつかのメリットが得られることが分かりました。

1.自走で暴れないので脚回りや駆動系を痛めることがほとんどなくなった。

2.クローリングが中心になったため、それまで苦手(というかほとんど走ることすらしてなかった)のキャンバー走行を走りに多く取り入れるようになった。


大きく言うとこの2点が大きなメリットでしたね。


それに合わせ、車のサスのセッティングも「ガチガチ」なものから「極めてソフト」なものへと変更していきました。

理由としてはまず「キャンバーを走行する際、ガチガチのサスだと車高が高すぎるため安定感が逆に損なわれるから」です。

また、「クローリング主体で這い回るとき、ガチガチのサスだと簡単にトラクションが抜けてしまうことが多かったり、足の動きの渋さにストレスを感じることが多かったから」という理由もありました。

もう一つ理由が。

それは「岩場などを這う際に、リーフの厚みがあると、その分、最低地上高が下がってしまい、逆に走破性をスポイルしてしまうことがある」ということがわかっていたということもあります。


■ウインチングを多く取り入れた、今の走行スタイルの導入
(2003年~現在)


また、この頃から「クロカンの基本は単独行だ」という考え方を強く持ち始めることになり、単独で山に走りに行ったり、

クラブのメンバーなどと一緒に走りに行っても、独りだけ勝手に走り始めているってことが増えてきました。

それまでは車の工具も本当に必要最小限度、補修部品に至ってはほとんど持ち運ばないってことが「当たり前」って感じだったのですが(トライアルに出てましたしね)、

何かあった際、自分独りでもある程度は対応出来るように、今から10年ほど前からレスキュー用品や補修部品をある程度車に載せたままクロカンをするようになりました。

そうなると、ウインチやチルホールなどで自力脱出させねばならないことなども多くなり、自然と「自走でダメならすぐウインチングだ」みたいな今のような走り方になっていったというわけです。



また、この当時、「アイアンバールカップ」という引っ張り系の競技会があり、そこの人たちとよく遊んでいたり、自分自身もアンカーマンとして参加したことが数回あるので、自然と「牽引を使ったクロカン」の幅が増えることになりました。

また、当時は岡山県の県北に「スーパーハード」という林間コースがあり、そこが引っ張り系の競技などで使われたことでもわかるように牽引して遊ぶのに最適な地形だったので、随分とそこで牽引関係の腕を磨くことが出来ましたね。



当時の走行記録の1つ




■クロカンの楽しみ方を大きく広げてくれた走り方 その1:「クローリング」

普通、何か自車の性能に対して不満があったとしたら、お金をかけて改造とか、人によっては車を替えてしまうってことが非常に多かったのですが、僕の場合は「なんとか金をかけず対応したい」ってことがありました。

まず、典型的なところでいうと、「粘りのないエンジン」と「高いギア比」で一部から不評をかっているPZJ70なのだが、僕が今までやった対策というのは、トランスファーのローギアを1.9倍くらいから2.2倍に落とした程度。
(部品代は2万円程度?)

あまりにも微妙過ぎて、ローギアダウンしているのが分からないくらいですね。


粘りがあるエンジンとH55-Fなど低いギア比のミッションに乗り慣れている人がアレに乗ると、ビックリするくらいエンストし易いと思いますし、実際に貸すとすぐクラッチから煙を吹き出すので、さぞや使いにくいのだろうなぁと思いますね。


そこで、普段、広場などで徘徊するときなどに徹底して「エンジンを粘らせてやろう」という練習を取り入れました。

タコメーターが付いてない車なのでハッキリとした回転数がわかるわけじゃないのですが、通常のアイドリングが800回転くらいだとすると、400~500回転くらいかな?

練習方法としては全くの平地をアイドリングだけで這わせながら、ブレーキを踏んでいきます。

当然、エンジンが「ガタガタ・・」と言い始め、あるところを境にエンストしそうになるのですが、その挙動が出たら、ブレーキを緩めたり、クラッチを踏んだり、アクセス操作をしてエンストを回避させることを何度も練習するわけです。


僕は基本的に今のPZJ70でこの練習をしてきたのだが、Jr.にクロカンを教える際には、うちにもう一台転がっている奥さんのBJ74V(13B-TとH55-F搭載車)で練習させた。

僕もその時、初めて粘りのあるエンジンでエンスト付近までギリギリ、エンジンを粘らせる練習をしてみたのだが、普段使っている1PZと13B-Tとでは随分、エンストしそうになったときの挙動などが違うってことがわかった。

自分のエンジンではエンストしそうになったとき、アクセルペダルを軽く踏むとまた「ガルン!」とエンジン回転が持ち直すことが多いのだが、

13B-Tはレスポンスが極めて悪いのだかなんだか知らないが、「エンストしそうだ!」って時にアクセルを踏んだのではもう遅いってことがあり、扱い方が全然違うんだなぁということがわかりましたね。

でもまあ、圧倒的に粘るのは設計の古い13B-Tの方なので、初心者が扱うのであればこちらの方が扱い易いですね。

なぜ、エンジンを粘らせることから始めさせたのか?というと、最大のグリップ力を発揮する際は、エンジンの回転数を極限まで落とした瞬間ということが多 く、山などで自由にエンジンを粘らせることが出来るようになると、たとえ粘りの悪い1PZ搭載車でも最大のグリップ力を引き出すことが多く出来るようにな るからだ。

つまり、エンジンを粘らせることでクローリングが楽しくなる。

このクローリングが楽しくなるということは、普通に走ったら何でもないような地形も、「もっと粘らせてやろう」とか、「もっとグリップ力を上手に引き出してやろう」などという楽しみが増えてくることに繋がりますね。






■クロカンの楽しみ方を大きく広げてくれた走り方 その2:「キャンバー走行」

コースなどに走りに行く機会が多いのだが、コースの端の斜面や障害物などを利用して車を傾けて遊んでいる人は本当に少ない。

だが、この「キャンバー走行」もクロカンを楽しくさせる1つだと思っている。

先ほど、エンジンをギリギリまで粘らせながらのクローリングを覚えると楽しくなるという話をしたが、このクローリングが自由に出来るようになると、「安定した速度で最大のグリップ力を引き出しながらクローリングすることが出来る」ようになる。

つまり、斜面に斜めに張り付いてみたり、溝にタイヤをわざと落として3点接地を楽しんだりという、これまであまりしてこなかった楽しみ方が出来るようになる。

これは僕の感覚なのだが、例えばスポーツランド岡山ってふつーに走ったのではたぶん1日で飽きる程度の難易度しかない。

実際、クロカンに飽きてしまい辞めた友人が過去に多くいたが、理由は「あそこのコースに飽きた」ってものが多かった。

だけど、僕に言わせると「楽しみ方を知らなかった」に過ぎないと思っているし、楽しみ方を教えてあげようと思ったが聞く耳を持とうとしなかったことが残念だと思っている。

この「ギリギリまでエンジンを粘らせたクローリング」や「キャンバー走行」ってのは本当に奥が深く、僕はいつまでたっても極めれる気がしない(汗)




まあ、同型車種に乗っている人の中ではたぶん、ズバ抜けて多くの時間を当てて練習していると思うので、得意なことには違いないとは思いますけどね。

また、この「極限まで速度を落としたクローリング」が出来るようになると、例えばモーグルや岩場などで、数ミリ単位のラインを攻めていくような精度の高い走り方も出来るようになるはずだ。

移動速度を極限まで落とすということは、それだけ時間をかけて地形の情報を得てそれを処理する時間も増えるということなので、車を壊さない走らせ方を身につけることにもつながる。

僕が出来ているってわけじゃなく、理論的には出来るはずだと思って、普段から鍛錬を積んでいるわけだし、Jr.にもコースを走りに行く前には必ずエンジンを粘らせる練習を反復させるようにしている。


キャンバー走行というのは、車の走破性ウンヌンが一切関係なく、どんな車でも比較的カンタンに練習することが出来る。

たとえば、先ほどのクローリングなどは純正のギア比のジムニーでは極めて難しいので、ノーマルギア比に近いジムニーやガソリンエンジンの車などはある程度、エンジンを廻して、振り回したり、飛んだり跳ねたりするような使い方にならざるを得ない。

僕がトルクが細いとはいえ、ディーゼルエンジンが好きなのは多少重さで自走の能力は落ちるが、低速で粘らせて走ることがお金をほとんどかけなくても比較的 簡単に出来るし、練習次第では粘らせてクローリングすることも可能なのだが、ギア比が高いガソリン車ではちょっと不可能だ。

だが、キャンバー走行というのはデフにデバイスがなくても遊べるし、タイヤが多少しょぼくても遊べるし、バンパーやサイドステップなどが邪魔で障害物が多いモーグルなどは入れない車でも遊べることが出来るし、腕も磨くことが出来る。

ほとんどの人が「コケたら怖いから」という理由で車を水平に保たせることしかやらないのは僕からしてみると本当にモッタイナイ。

なぜなら、車を安全に傾けれるようになれば、コース内などで遊べるポイントが劇的に増やすことが出来るからだ。






■クロカンの楽しみ方を大きく広げてくれた走り方 その3:「レスキュー」

自分で自分を助けることは、セルフレスキュー。

他人を助けることは、ただのレスキュー。

僕はどちらも大好きですし、非常に楽しいですね。

レスキューの中心になってくるのが「ウインチング」などの技術なのですが、先日からも言っているように、このレスキューを取り入れたクロカンに、ランクルやサファリのような重量級のクロカン車は非常に向いているという一面があります。

「引破だけ」とか「自走だけ」で言うと、より軽量で小型なジープやジムニーなどに軍配が上がることは間違いないのだが、

例えば1.2tのジムニーに100キロのウインチや補修部品を積んだ際に及ぶ影響と、2.5tのランクルに200キロのウインチや補修部品を積んだ際に及ぶ影響は理論上同じってことが言えますね。

ただ、大型で重量車の方が、たとえば廃道などを攻める場合は制約が多くなり不利ということはありますが、

自走に頼る比率が高い軽量車とクローリング主体でウインチング前提の重量車とを比較した場合は、圧倒的に重量車の方が重量物を載せたクロカンでの影響は小さくなると思っています。

また、以前も言いましたがアンカーになることを想定した場合や、他車を引く場合は自車が重いほうが有利になることが多いですし、ウインチの能力も高い方が実際使い易い。

また、装備も厳選したものだけしか載せれないというのではなく、アレもコレもと載せていた場合の方が、現場での対応力は高いですしね。

自分が乗っているPZJ70は、ランクルの中では小柄な部類に入りますし、エンジンやギア比などの点でいうと、人を大勢載せたり大量のレスキュー用品を載せるのはスペース的な問題がありますが、

小柄だと有利なことも結構あるので、まぁそこはトレードオフの関係なのかな、と。


ということで、レスキューの対応力が高い車というのは単独行が比較的自由に行えるってこともあるので、人の都合に振り回されることなく自由に自分が走りたいときに走って腕を磨くことが出来ますし、

自分がラインを選択する際にも、「ハマったらどうしよう?」じゃなく「ハマったら楽しい牽引が待っている♪」というのでは、楽しめる幅が大きく変わってくるだろうと思う。

こんな感じで、「クローリング」「キャンバー走行」「レスキュー」という新たな楽しみ方を見つけて飽きもせず遊んでいるってわけです。



■一緒に腕を磨く仲間を手に入れること

先ほどは単独行をする上でレスキューの能力や装備は欠かせないよという話をしましたが、クロカンを楽しくさせるコツとして「一緒に腕を磨くライバルや競争相手を常に持っておくこと」も非常に重要だと思う。

僕の場合は、昔から「人見知り」って言葉の意味が分からない感じなので、誰かのグループの中に入っていったり、知らない人と一緒に遊んだり仕事をすることは本当に苦にならないのですが、

最近は、めったに積極的に絡んでくれる人が少なくなった(笑)


だが、以前から何人かは車の戦闘力がほとんど変わらないような人などと一緒に練習したり、注文を付け合ったりしながら楽しくクロカンの練習をしていたこともありました。



「ライバル」とか「下手なことをするとすぐ突っ込まれる相手」が多いと、クロカンというのは本当に楽しくなるということもあるので、僕としてはお金をかけて走破性ばかりを上げてしまうと、腕だけの勝負が出来なくなるので面白くないってのもあります。



■今のサスセッティングは?

基本的にこの「クローリング」「キャンバー走行」「レスキュー」が中心のクロカンなので、サスのセッティングはそれに最適(?)なものにしている、というか「適当」です
(^^;

まず、先日から純正のリーフにリアサスを戻しましたが、スパンが若干短いため、以前装着していたオールドマンエミューベースのリーフに比べてリアのストロークはかなり短くなっていると思います。

フロントは、元々ランクル70系はフロントは動きやすい構造なので、ストロークだけでいうと文句はありません。

ランクル70系の場合、シャーシの真下にリーフのピボットがあるので、シャーシの幅が狭くなっているフロントサスは、リアサスに比べサスの支店が内側に寄っているため、同じストロークと硬さだとしてもフロントがよく動くってわけです。



これはおそらく70系プラドのシャーシですが、シャーシは基本的にリーフの70系とほとんど変わらない。

こうして見てみると、いかにフロントがリアに比べて狭くなっているかお分かりいただけると思います。(左側がフロントです)


ちなみにこのジープ、リアサスのピボットを内側に寄せているので、リアサスの動きが劇的に上がっている。


ただ、リアのシャーシが幅広くなっていたり、サスのピボットが外側に寄っているのにもちゃんとした理由があるからなので、僕としては無理してまでリアサスのピボットを内側に移動させたいとは思っていません。

(シャーシの間に燃料タンクがあるので簡単には動かないってのもあります)


そこで、フロントもリアもそれほど大きな改造を施してないのだが、基本的に「縮み重視」なセッティングをしています。

リジットタイプのホーシングを持つクロカン車ってのは、結局、サスが縮み、バンプストッパーにホーシングが当たることで、そこを支点にして「伸びよう」と するわけなので、支点になるバンプストッパーを安易に長くしてしまうと支点が下に下がってしまい、当然のことながら縮みは犠牲になり、反対側も伸びなく なってしまう。

そこが理解できてないのか、安易にバンプストッパーを伸ばす改造をする人が多いのだが、僕は縮んだ時に当たるものを撤去していく方を優先させているし、安易に大きなタイヤは履かないようにすることで、

走破性を著しく上げない、駆動系や操舵系を保護して、長時間のクロカンに耐える耐久力を残すようにしているつもりだ。






■車高が高くなって走れない処は多いが、腹下が引っかかって走れない場所は少ない

僕は基本的に安易に車高を上げることは否定派です。

というのも、さきほど言っていたように、安易に大きなタイヤを履いてしまうとギア比などの問題も大きくなるので大改造が必要になってきたり、駆動系などの負担も飛躍的に高くなってしまうため、「クロカンの腕を上げるように走り込みをする」と簡単に車が壊れてしまう、ということが多くあるからです。

今、僕は34インチのスワンパーを履いてますが、これ以上のサイズのタイヤはおそらく履くことはないでしょうね。

(ハチマルみたいなロングホイルベースの車だと話は別ですが)

ホイルベースが長くなると相対的に腹下が引っかかり易くなるので、多少はショートに比べて上げた方がいいと思いますが、

車高の上げすぎはキャンバーでの安定感を急激にスポイルしてしまうため、僕が例えば家に転がっているハチマルを走り中心で改造するとするなら、

・フロントデフの保護も兼ねて、大きくても34吋程度のサイズのタイヤを装着

・(なるべくなら)車を真横に傾けた際に、前後で同じ傾きになるバランスのコイルを装着

・サスは基本的に縮み重視、タイヤなどが当たるのであれば、タイヤハウスの中を加工したり、スペーサーなどを噛ませることでタイヤとの干渉を逃がす

・若干、カメになりやすいのでサイドシルなどの保護をしておく

・ウインチング前提なので比較的強力なウインチを搭載

・リアにも200kg前後の荷物を載せるので、荷物を載せた状態でバランスを取るコイルを入れる


とまぁ、こんな処でしょうか?

ハチマルの場合も、シャーシは70系と同じく、リアが広いのだが、フロントが動きが規制される3リンクなのに対し、リアは比較的抵抗が少ない5リンクをおごっているため、70系とは違い、リアが圧倒的によく動く構造になっている。

フロントは動くようにすると、タイロッドがリーディングアームに干渉してしまうなど、数多くの問題を解消せねばならないため、僕は基本的にバネとショックだけ最適な長さと硬さのものだけ入れて、後はノーマルに近い状態で遊ぶでしょうね。


そういえば、先日、前後のサスが同じように伸び縮みするようにセッティングしたいという記事を見させていただいたのですが、僕としてはそれは意味があまりないと思います。

というのも、そのようにしてしまうと、例えばフロントだけが異常に柔なくなってしまい、急激に腰のないサスペンションになってしまう、ということが多いからです。

ちなみにランクル70の前後リーフ車は圧倒的にフロントの方がよく動きます。

たとえば、前方にコブがあり、そこにフロントタイヤを乗せると、コブを踏んだタイヤが縮み、反対側は凄く伸びるのですが、リアサスはほとんど動きません(笑)

逆に後方にコブがあり、そこにリアタイヤを乗せると、コブに合わせて車が傾き、フロントサスが派手に動いているのですが、リアサスはほとんど動いていないという状態になることがほとんどです。

僕はこれを以前から「サービス残業のフロントサス&職務怠慢リアサス」みたいな言い方をしていることがありますが、これはこれで問題ないと思っています。

というのも、仮にそれを前後バランスが取れるようにリアを極限まで柔らかくしてしまうと、恐ろしく踏ん張りの悪いリアサスになってしまいますし、また車高も大幅に落ちたり、ジャダーによるリアサスの寿命も落ちてしまいますね。

フロントが良く動き、リアがあまり動かない車としてはチェロキーなどがありますね。

フロントはコイルなので異常にぐにゃぐにゃ動いて気持ち悪い(笑)のですが、リアサスはあまり動かない。

サファリのY60やランクル80などはその正反対ですね。

もちろん、フロントが独立懸架のテラノなどもフロントが動かず、リアが抜群に動くタイプです。

かといって走らないのかとか、クロカンのシーンで使いにくいというと、そんなことはない。

要は、ランクル70でいうと、リアサス中心のライン取りをすればいいだけだし、反対のY60などはフロント中心のライン取りをすればいいだけなんですね。

僕の場合、複雑に入り組んだモーグルなどを登る際に、リアサスが踏むポイントを徹底的に頭に入れておくことから始めます。

フロントは勝手に動いてくれるのである程度適当なラインでいいのですが、リアは左右で踏んでいるポイントが水平じゃなくなると急にトラクションが逃げてしまうからですね。

ランクル70ショートの場合、リアタイヤに近いポジションで座っているので、比較的リアタイヤから伝わってくるインフォメーションがドライバーに伝わり易いので、結構そこは気に入ってますね。

逆にフロントよりリアがよく動く車というのは、フロントがなるべく水平になるラインにねじ込んでしまえば、リアは追従して勝手に動いてくれるし、しっかり 後ろからも押してくれるので、フロントタイヤからステアリングを通してつたわってくるインフォメーションで微妙なハンドル操作をするんだ、ってのを聞いた ことがあります。






■サスストロークが大きいと逆に走れなくなることもあるということは覚えておいてもいいと思う

これはランクル70系などのリーフ車で思うことなのですが、抜群にサスが動くセッティングの車などはビックリするほどブッシュが潰れることが早かったり、ジャダーでショックが折れたり、Uボルトが折れたり、いろいろなトラブルを抱えることが多いようです。

車屋でブッシュの付け替えをするのであれば時間は取られませんが、お金はやっぱりブッシュごときで何万も取られることがありますし、もったいないですよね。

ですので、サスストロークを異常に稼いだ車ってのは走り込みを阻害することも多いってことを覚えておいた方がいいと思います。

また、異常にグニャグニャな車というのはオンロードで驚くほど不安定な車も珍しくないみたいですし、また先日、うちのJr.がやったようなフロントを溝に 落とした3点接地などで僕の車で安定して行ける処をその数段前でコケてしまったり、キャンバーやモーグルで不安定になることが多いということは知っておい た方がいいでしょう。



※この程度じゃ、僕の車ならまだコケません
そもそも本当にコケそうなら、運転席から降りた時点でコケてます(笑)


「車高が高くなって走れない処は多いが、腹下が引っかかって走れない場所は少ない」というのはそういう理由もあるからなんですね。

腹下がひっかかってもハイリフトジャッキなどで軽く持ち上げて通過させたり、ウインチで引っ張って通過させることも可能ですが、

通常の場合、重量車で転倒させてしまうと、その日(もしくはそれ以降ずっと)は引退ですもんねぇ。

引退にならないとしても修理代でウン十万とかありえません(汗)


また、先ほども言いましたように傾けて遊ぶことは到るところでできますが、傾きに耐性がない車だと物理的に遊べるポイントが急激に減ってしまうからです。

「常に車が水平に保てるように走ろう」なんて、おそらくスポーツランド岡山程度の難易度のコースだと1周程度で飽きてしまうでしょう(笑


■車を壊したり、凄い改造をすることがえらいんじゃない

これは僕が普段から思っていることなのですが、車の改造はソコソコが一番楽しめると思いますネ。

先日、LCCOの若手にクロカンの初心者講習会ってのをしましたが、自走の能力はそんなに高くない僕の車でも、初心者たちの車と比べると「熟成」が進んでいる(汗)ってのもあったり、泥に異常に強いスワンパーを履いているってこともあり、全くついてこれませんでした。

クロカン歴が半年にも満たないJr.が運転してそんな感じなのですが、彼らからするともしかすると「あれは車がいいのでよく走るんだ」って思っていたかもしれませんね。

車の改造をほとんどしてない僕の車ですらそんな感じで思われることも多いかもしれないので、いわんや大改造を施した車なんて「あれは車がいいから」って思われて最初から腕を磨く相手として認識されないんじゃないかと思います。


車の改造やセッティングを競い出すと、走りに行くことではなく車から降りてくっちゃべっていたり、車を工場に入れている時間の方が長くなってしまうので、 僕からしてみるとお金はかかるし、競争相手は減るし、腕は磨けないしで良いところが全くなくなってしまうと感じるんですよね。



たとえば先日からアメリカの大改造した車を見て「凄いな」とは思いますが、あくまでそれは参考にする程度で、自分としてはまずああいう改造はやらないでしょうね。

また、改造で誇ろうとするなら、アメリカなどの車検制度が非常に緩い国にいる人たちを相手にしなければいけませんが、明らかに何千万も車につぎ込んでいるような人を相手にしないといけないのはまず僕からしてみたらありえないって思います。


また、車を壊すということも、僕からしてみると下手くそなのを証明しているだけで、えらいとはとても思えないんですよね。

自分にとっては「単独行」というのは腕を磨くために必要不可欠なもの。

なるべく壊さず、潰さず、それでいて遠慮なくアレもコレも走って楽しんでその日に自走で帰ってくる。

これが理想的なクロカン乗りの姿です。

クロカン四駆にフルバケットシートは必要か?


クロカン四駆にフルバケットシートは必要か?

「人馬一体」という言葉をよくクロカンのシーンでは耳にすることがあります。

僕はランクルでしかクロカンをしたことがない、生粋のランクル乗りだと思っているのだが、たまにリーフのジムニーや三菱ジープなどに乗らせてもらうとビックリすることがある。

これらのクルマは基本的にランクルより小さいクルマなので、地形の高低差などの影響をランクルよりはより受けやすい・・・というような当たり前のことではなく、

地形から伝わってくるインフォメーション(情報量)が圧倒的にランクルより多いことで驚くのだ。

僕は最初、ランクル60でクロカンを始めたが、「もっと戦闘力の高いクロカン車が欲しい」「ステーションワゴンは要らなくなった」などの理由で、ランクル70短に乗り換えました。




乗り換えた当時思ったのが、ホイルベースが短くなったことで、同じ斜面を登る際にもクルマの前後の傾き(ピッチング piching)が大きいのでビックリしたものだ。

また、ランクル60に比べ、ボンネットの先端が絞られているので、より死角が少ないことや、運転席に座ったとき、ドアの高さが低いので下方向への視界が広く、「ロクマルより運転席で得られる情報量が多いな!」と感動したものだ。


これはランクル60と70短での比較でしかないのだが、後になってランクル40に乗ってみたら、70よりさらに短く細くなったボンネットや、振動などが伝 わりやすいコックピットなどの影響もあって、さらに運転席で得られる情報量が多いことに驚かされたし、何より「地形からの情報がハンドルやシート、アクセ ルペダルなどを通じてものすごくダイレクトにドライバーに伝わる」ということに驚かされた。


さらに三菱ジープに乗ったら、リアボディなどが低く小さいことで後方下部の視界が極めて広いことや、40系よりさらに多くの情報が得やすい運転席に驚いた。



それがさらに小さい前後リーフ時代のジムニーに乗ったときは・・・

正直「なんじゃこりゃ!」って思いましたね。


そういうことがあるので、僕は「ジムニーに乗ったらより腕が磨かれる」ということを聞くと「そりゃ、違うだろう?!」って思うのです。

だって、ジムニーやジープなどに比べると、圧倒的に70系などは地形から得られる情報量が少なく、人馬一体感を得られることが難しくなるわけだし、

それがフルサイズのランクル60系や、コイルになった80系やサファリY60やY61などになると更に更に得られる情報量が希薄になるので、ジムニーやジープとはまた違った難しさが存在するからだ。


■インフォメーションが希薄なクルマで人馬一体感を得るには?

今でこそそれほどでもないのだが、僕は極めて負けず嫌いな性格だったので若い頃は「クロカンで誰にも負けたくない」という想いが非常に強かった。

だが、ほかの人と比べると圧倒的に貧乏だったので、改造でお金をかける余力もない。

そこで考えたのが、「運転席で得られる情報量を可能な限り大きくしてやろう」というものだった。

その一環で行なったのが「フルバケットシートの導入」。

それと「内装の撤去」、「タイヤハウス内のカット」、「(クロカン時に)左右のドアを外せるようにする」という改造だった。

バケットシートは確か4万ほどした?のだったが、左右のドアが外せる加工は、材料費で1000円ほどしか掛かっていないので、個人的には極めて安くあがっていると思うのだが、極めて有効な改造だったと思っています。


特に劇的だったのは「運転席側のドアを外す」ということだったのだが、これについてはまた別の機会で話をするとして、今回は「フルバケットシートを導入した結果どうなったか?」ということについてお話したいと思います。


※ちなみに、今からちょうど10年ほど前に、当時のレポートが残されていたので一応、こちらでもご紹介しておきます。

ほのぼの系クロカン(自分流悪路走破考察より)

フルバケットシート(自分流悪路走破考察より)
※当時、勘違いしてサイドサポートのことをランバーサポートと言っております。実際はサイドサポートのことなのでご了承願います


■フルバケットシート必要論

必要論というと強すぎる言い方かもしれないのだが、一応、僕はこんな風に思っているということをお聞きいただきたいと思います。

10年前のレポートに、当時、導入を決めた理由を詳しく載せているのでそちらも見ていただきたいのだが、

今回は、15年以上フルバケットシートでクロカンしてきてどう思うのか?ということを書いてみたいと思います。


先ほど「人馬一体感を得るためにはフルバケットシートは必要」みたいなことを書いたのだが、初心者のうちは別段必要じゃないかも?と思ってます。

というのも、うちのJr.にクロカン(というか普通の運転の基礎の基礎)を教える際に使ったクルマは、奥さんのBJ74Vで、そちらのシートは純正シートだったからです。


僕が今使っているBRIDEのフルバケが気に入っているのは、なによりも非常に高いサイドサポートがあるからだ。




ちょっとシート形状は違うが、これでいうと”4”の部分、つまり太ももを左右で押さえているのがサイドサポートだ。

シート形状の中で僕が最も重視しているのがこのサイドサポートの形状や高さだ。

僕の運転するときのポジションは、左右の太ももをこのサイドサポートに内側から外に向けて押し付けることで腰や足先の位置を固定させています。

四駆によるクロカン、特に重量級ディーゼル車のクローリング主体のクロカンの場合、高速走行による過大な横Gなどはかからないのだが、

より起伏の大きな地形を移動させるため、ドライバーにかかる重力の向きは非常に変化します。


■より正確な操作をするためのフルバケットシート

これは普段、ノーマルシートやサイドサポートの低いクルマでクロカンをしていて、僕のクルマについているようなフルバケットシートに乗ってみたらすぐ気がつくと思うのだが、

クルマが派手に揺らされる時や、クルマが40度ほども傾いた時などにもそれほど苦労することなく、アクセル操作やブレーキ操作、クラッチ操作が出来ることだ。


逆に言うと、ちょっとした揺れや傾きで腰がシートの上でズレたり、足先が揺らされたりするクルマで、自分が思ったような操作ができるはずがないのだ。

「いや、思ったように操作していますよ」って言う方がおられるかもしれないが、それはたまたま今はうまくいっているだけで、よくよく見てみると、クルマが勝手に走ってくれていただけというようなお粗末なことも珍しくないんじゃないかと思っています。


ランクルの様なディーゼル車の場合は特にこのような体 勢になると移動速度を極限まで落とし、微妙な操作やシートなどから伝わってくるタイヤのグリップしている様子や車の挙動変化などに神経を張り巡らせている 場合が多いので、自然と傾いたまま停止・・・みたいなことも多くなる


試しにクロカンをしてる最中に、左右の足先が車が揺れている最中、どのように揺らされているか見てみるといい。

足元は視界に入らないということもあるので見てみるとギョッとするかもしれないが、結構な勢いで前後左右上下に揺らされていることが分かると思う。

中には「左足で踏ん張って体を固定しているんだ」って人もおられるかもしれない(特にAT車の場合は)。

だが、僕はAT車を操作するときは大体、左足ブレーキを使っているし、

ましてや自車がMT車でクラッチを終始使わねばならない車の場合、クラッチを操作しながら、右足はブレーキやアクセルペダルを操作するって状況は極めて多いので、「左足で踏ん張るからホールドの良いシートは不要」という論は破綻していると感じる。

これはフルバケの話からは若干逸れるのだが、僕が揺らされるヒルクライムなどでアクセル操作に集中したい場合は、アクセルペダルの右手前にあるロールバーに右足のふくらはぎを押し付けて、足首の操作でアクセルの微妙な調節をすることがある。

つまり、膝を左右に広げ、サイドサポートを内側から押し広げることで体全体を固定し、それでも揺れる足先はロールバーに押し付けることで固定しているわけです。




■より多くのインフォメーションを得るためのフルバケットシート

例えばF1やツーリングカー選手権などに出ている競争車などで運転席の中で体が自由に動かせるようなクルマってあるだろうか。

まずありえないだろう。

これはマンガの中や映像でしか見たことがないのだが、例えばF1などではコクピットの中でピクリとも動くことが出来ないくらいガッチリとホールドさせるのだそうだ。




ただ、”クロカン”となるとそこまで強く運転手をシートに拘束してしまうと、乗降性に悪影響が出るし、運転席に乗ったまま、上半身だけクルマの外に突き出したり後ろを振り向いたりして運転席からの死角をなくす動作などが出来なくなるので逆効果になるのだが、

それでも僕はなるべくしっかりホールドしてくれるシートの方が特に外からのインフォメーションが弱いクルマに乗っている人にとっては重要度が増すと思っています。


■操る楽しさを教えてくれるフルバケットシート

先ほどから「人馬一体」というキーワードを使っていますが、この「人馬一体」を体現している人の操作を外から見ていて感動することがあります。

タイヤの4本、全てに神経が張り巡らされているかのようなクルマの操作、

ボディの端を正確に掴んだ繊細な操作・・。

それをランクル60とか80などのフルサイズで行なっている人の走りを見ると鳥肌が立つことがありますね。


自分の場合はまだ当然極めるという域には至ってませんが、それでもランクル70系に乗っている人の中では車両感覚が掴めている方だと思っているし、思い通り操作することも得意な方に属しているという自信はあります。


僕が走り込みを重視したことを言うのも、よりカンタンな地形での走り込みをオススメするのも、結局のところ「人馬一体感を得ることを優先することで、クル マの損耗も抑える走りが出来るようになることや、クルマの操作が奥深いことを体験してもらうことで飽きの来ないクロカンを覚えてもらいたいから」ですね。



クロカンの上級者や先輩などから「クロカンは”腰”でするものや!」というようなことを聞いたことはないだろうか?

これについては僕も同感なのだが、腰や太もも、背中にかけてシートと密着した処を通して地形からクルマに伝わってくる情報をクルマの操作に反映させるという意味だと思う。


タイヤから伝わってくるトラクションを感じながら、トラクションが抜け始めたらアクセルを緩めてみてグリップが回復するところまでタイヤの回転数を落としてみたり、

もっとタイヤの回転数を落としたい場合はクラッチやブレーキで落としたり・・・

逆に細かいアクセル操作でトラクションを得てみたり・・・

そんな風に地形と相談しながら自分が思ったようにクルマを操作し、イメージしたとおりにクルマが動いてくれる時が自分にとっては至福の時ですね。


■安全面で一枚上手のフルバケットシート

僕は普段のクロカン時には4点式シートベルトの腰の部分だけを止めて、肩のベルトは外しているのだが、

理由としては、「上半身を自由に動くようにしておきたい」ということがあります。

先ほどもちょっと言いましたが、運転席からの死角をいかに減らすか?ということは非常に重要なことだと思っています。

そこで僕の場合は運転席のドアを外したり、タイヤハウスの中をぶった切って、運転席から直接タイヤが見えるようにしてみたりと色々と手をうっている。




運転席からちょっと右に体を傾けた状態で見ることが出来る風景
上側がフロントタイヤとフロントタイヤと接している地面の様子
下側はリアタイヤとリアタイヤが接している地面の様子だ


純正の3点式シートベルトが嫌いなのは、肩から腰にかけて斜めにベルトが通るというのと、傾いた状態ではシートベルトが引っ張り出せないのでシートベルトが出来ないことがあるからという理由があります。

まぁ、シートベルトはある程度引っ張り出した状態で止めておくことも可能なので、斜面で停ったからといってシートベルトを使えませんってわけじゃありませんが、それでもあの斜めのベルトが邪魔なんです(笑)


中には「4点式シートベルトだからといって、腰のところだけ止めていても危険だろう?」って思うかもしれませんが、

本当に転倒しそうなら運転席に座ったまま、肩のベルトも付けますし、また非常にホールド性の高いシートのお陰で、腰だけ止めていても転倒時に体が運転席の外に出てしまうこともほとんど考えられない。

それはそうですよね。

コの字型のシートに上から蓋をするようなものなので、腰がシートから離れることはまずありえないからです。

(※まぁ、重量級のクロカン車の場合、谷底に転げ落ちるような危険なルートは走らない方がいいとは思いますけどね・・)

ちなみに僕が以前、4/4回転したときは、腰だけで止めていたのだが、転倒時にハンドルに両手をかけていた腕を伸ばし、シートに体を押し付ける体勢にしていたため、一回転しても問題ありませんでした。



それ以降も、軽く寄りかかったということも含めたら10回以上は転倒してますが、転倒体勢(つまり受身)を取ることはバッチリなので、もちろん怪我したことは一度もありません。

このように安全性の面でいうと、セミバケットやノーマルシートと比べてフルバケが一枚上手だと思いますネ。


■キャンバー走行で強いフルバケットシート

スピードを出す競技車両になくて、クロカン車でよくあるのが「クルマを横方向や縦方向に大きく傾けたままの姿勢を長時間続ける」ことがある点です。

僕は特にキャンバー走行が大好きなので、より安定してキャンバーを攻めたいと思っているのだが、このキャンバー走行中に非常に大きなサイドサポートがあるフルバケットシートは非常に強い味方になってくれる。

クルマが横に30度ほども傾くと、サイドサポートが貧弱なシートではどんどんシートの座面からお尻の位置がズレてしまいます。

それも1分や2分なら頑張って持ちこたえれるかもしれませんが、そんな状態で正確な運転操作が出来るかは非常に疑問ですよね。

岡山近辺ではあまり見かけなくなりましたが、以前は非常に長いV字溝を通過させるのに長くなると何時間も20度以上傾いた運転席に座っているってことがありましたが、さすがにそこまで長時間、傾いた運転席に座りっぱなしということは減ってきましたね。

ですが、非常に難易度の低いコースなどを走っていてつまらない場合などは積極的にコースの側面の斜面などを使って、クルマを傾けて遊んだりしますが、このような遊びがし易いクルマなら、より飽きずにクロカンを続けれるんじゃないかと思いますね。




■一枚上手のクロカニストを目指すのであれば・・

僕はフルバケットシートの導入をオススメしたいと思います。特に重量級のクルマは。

まず、なにより運転が楽しくなると思います。

あと、フルバケットシートにしてもリジット型(一体型)のものと、僕が使っているようなリクライニング可能型があったり、

シートの材質もファブリックなどの布製のもの、人工革のもの、ビニール製など非常に多く存在します。

また、一部の競技車両などでみかける、クッション材がほとんど入っていない、低反発素材でオーダーメイドみたいな形で作られている高級シートなどいろいろ存在するみたいです。

セミバケットシートも含め、好みの問題などもあるので一概に僕と同じ考えを持つ必要はないと思うのですが、

クロカンの現場などで見かけるクルマなどにシートなどに座らせてもらったり、店頭などに置かれているシートなどに座ってみたりいろいろしてみて、

気に入ったものを手に入れてもいいんじゃないかと思います。

また、あまり見かけたことはありませんが、純正シートにサイドサポートなどを付けてみるということなども有効な改造かもしれませんよ。

セルフレスキューテクニック


セルフレスキューテクニック
「単独行が好き♪」

・・・ということで今回のレポートは「セルフ・レスキュー」についてお話したいと思います。


■もっと単独行を楽しもう



いきなり脱線して始まりますが、先日、LCCOの走行会に参加(?)していて、皆がなかなか走りに出ようとしないので業を煮やして、Jr.と単独で先に走りに出ていました。

僕は昔からこんな風に結構自分勝手なヤツなのですが(笑)、これはクロカンの世界では別段、悪い話ではなく、ある程度自分で自分を救える技と装備を整えている人はもっと積極的にやればいいと僕は思っています。




■「つるんで走るだけが能じゃないだろう?」

先日の記事で、「クロカンの練度を走行時間などで言ってみるのはどうだろう?」というようなものを上げたことがありました。

僕の場合、おそらくですが、これまでクロカンの現場でハンドル握って運転してたり、レスキューやウインチングなど、実際になんらかの操作をしている通算時間はおそらく1000時間を超えていると思うのですが、

この”クロカンの実稼働時間”というのは、友達とだらだらしゃべっていたり、他人の走りを観ているだけでは稼げません。

もちろん、他人の走りを観て勉強するってのもアリだし、ウェブやYouTube動画などで観て学ぶってのも大事だとは思うのですが、

細かいフィーリングや、深い経験値ってのはやっぱり自分自身の五感で得ていくものなので、現場での実稼働に及ぶものはないと思います。

これは何もクロカンだけの話ではなく、仕事などでスキルを身につける際にも「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」と言われる、「仕事しながらスキルを身につけるトレーニング手法」が非常に有効であるのと同じことですね。

脱線したので戻しますが、そんな感じでクロカンの実働時間を稼ぐにはある程度、周囲のペースに流されず単独行をするってのはアリなんじゃないかと思います。




■プチ単独行をしよう

先日の走行会は全体で60台ほどがスポーツランド岡山という箱庭に集まっていたので、「単独行?」というとピンと来ない上級者は多いと思うので、ちょっと言い方を変えて「プチ単独行」としてみましょうか。

この「プチ単独行」なら、台数が多かろうが、狭いコースで多く集まる状況やランクルミーティングみたいに基本、走りが目的じゃないイベントなどでも比較的、実施しやすいです。

プチ単独行なら、広場横のちょっとした障害物(オブスタクル)で遊ぶことも出来ますし、周囲に人やクルマが多くいるのであれば、彼らへの話題提供にもなるし、万が一スタックや転倒などをやらかしたとしても、すぐ助けてもらうことも出来る。

つまり、比較的初心者や、道具などが揃っていない人も安心して攻めることも出来るってわけだ。

「誰も手も借りないぜ」っていうような中級者以上は、アンカーもなるべくなら誰の手も借りないようにすればいいかもしれないが、

たとえばテージャスランチみたいに牧場の真ん中にポツンとコースがあるような処ではアンカーになる木や岩などが見当たらないこともある。

そういう場合に限り、例外的にアンカーだけ他のクルマにお願いするという遊び方もある。



もちろん、グランドアンカーなどを用意して引っ張るようにしてもいいかもしれませんね。

(僕も以前はグレーチングと杭数本利用してグランドアンカーとして持ち運んでいたこともあったが、現在は重すぎることもあるのと、SLOやいつもの山みたいにアンカーに事欠かない場所を走る機会が多いので持ち歩いてません)




■ほとんどの場合は予備ワイヤーと予備のトウロープでグランドアンカーの代用は可能

ちょっと余談になってしまうのだが、岡山を中心とした地方で、「ほんまにアンカーになるものがない(汗)」と焦ってしまうような場所は結構少なく、広島のテージャスランチや、兵庫の福崎などが割とアンカーがなくて困る場所がある。

スポーツランド岡山も、広場が場合によっては「アンカーは100m先」ってことがあるくらいなのだが、逆の言い方をすれば、予備ワイヤーも含めて100mほどの長さで引っ張れるようにしておけば、ほとんどの場所であらゆる方向で牽引が可能ということが言えるわけだ。

これは、いつも走りに行っていた山の中でぼくらが「ムーミン谷」と呼んでいたポイントがあるのだが、

そこのある斜面を登る際は、アンカーになる木で手頃な強度のものが少なく、アンカーになる木を心配しながらウインチングする・・・ということで、アンカー への負担を抑えるようにトルクアシストをうまく使わねばいけないということがあったため、随分とトルクアシストの習得に役にたった思い出がある。

ただ、明らかに弱いと分かっているアンカーで引っ張るのは、危険性の問題もあるし、トルクアシストを上手に使いこなせない初級~中級者はしないほうがいいだろうと思う。



そこで、必要になってくるのは”アンカーを分散させる”という技術。

つまり、一本ではひ弱で使えない木なのだが、5~6本をまとめると結構頑丈になって使えるようになることがあります。

これらの「分散アンカー」とか「空中アンカー」などと呼ばれることがあるので、これらを少し説明してみたいと思います。


■分散アンカーとは?

まず分散アンカーについてご説明します。

分散アンカーを使う目的は、先ほども言ったように主に「弱い木などを数本まとめてアンカーにすることです。

例を挙げればこんな感じ。



これは5本の木を2つのグループに分けて、それぞれ2つのグループをつないでいる例ですね。

2つのグループはウインチワイヤーでつないでいますが、向きを変えるために1つ滑車を使っています。

これは束ねる例ですが、長いトウロープを使ってまとめて使う方法としてはこんな使い方もあります。



これは左端の木にまず巻きつけておいて、残りの木に荷重が分散するように工夫してトウロープを張り巡らせた応用法ですね。

ちなみに左端の木に止めているのはチョークとしって、トウロープの輪っかの中にロープと木を通すことで固定させる方式を使っています。

続きて、「空中アンカー」について説明したいと思います。


■空中アンカーとは?

空中アンカーとは、文字通り「空中にアンカーを作る」という方法です。

これは、例えばまっすぐ引っ張りあげたいのだが、その向きにアンカーになる木がなく、2つ以上のアンカーを利用し、「空中にアンカーを出現させる」というものです。


↑真ん中の赤い丸は滑車

このように、左右にアンカーが分かれていて、そちらに引っ張ってもいいのだがなるべくなら車の向きに対してまっすぐ巻きとりたい場合などに使うことがあります。

これは、泥沼などにハマってしまい、横引きするとワイヤーが破断してしまう場合などに用いられる手です。


単独行で遊ぶようになると、この分散アンカーや空中アンカーはよく使うようになるので、ぜひ普段のクロカンなどでも積極的に使ってみてください。

これらのようにアンカーを分散させる場合は、最低でも2~3のトウロープと、1~2個の滑車、3~4個のS字フックなどが必要となってくるのと、予備ワイヤーがいくつか必要となってくる場合があります。


■使用している牽引関連用品の紹介

あとあって便利なのは、ワイヤークリップ(ワイヤーの真ん中で引っ掛けて使うことでワイヤーの長さを調節するもの)や、ハンドウインチ、小型のチェンブロなどがあると応用範囲がさらに広がりますので、オススメです。



これは僕がもっているワイヤークリップ。

これはテコの原理でワイヤーをロックさせるタイプのものだが、他にスライドさせてワイヤーを挟み込んでロックするタイプのものもある。

ただ、どちらのタイプもワイヤーを痛めることになるので、要らなくなったワイヤーなどを使うと良いだろう。

僕の場合は、ウインチングで切れたワイヤーを予備ワイヤーにして、そちらでよく使ってました。




分解するとこうなります。

逆向きで組もうとすると穴の位置が微妙に合わない親切設計です。




ハイリフトジャッキを使った尺取虫戦法(ハイリフトジャッキをハンドウインチみたいに使う方法)などでは必需品ですね。

また、空中アンカーなど、真ん中にくる滑車を微妙な位置に調整したい場合などにもワイヤークリックで長さを調整することがよくあります。




僕が使っているトウロープは1・2・3mの合計3本。

もっと長いロープを使っている人もいるが、長さが違うロープを複数持っておけば、空中アンカーなどで楽に調整出来ることもあります。

これは余談ですが、僕はクッションロープは使わない主義です。

ジムニーなどでウインチを載せてないクルマでは必需品の場合もありますが、細かいテンションの管理がまず無理だし、ロープが破断したときのリカバリーが難しかったり、危険度などもあるので重量車では使うべきではないと思ってます。

ですので、スノーアタックなどでも僕らはウインチやトウロープを多用します。




滑車は軸にベアリングがちゃんと入っているオタフク滑車を2個使用。
小さい方がスイベルする5インチ。
大きいほうがスイベルしない6インチ。
普通は6インチをよく使っています。
S字フックは必需品ですねぇ。




これは10年ほど前に愛用していたクロカン用シューズ。

横からみてもかなりいかついトレッドパターンをしていることが分かると思うが、実際、ウインチングなどでは足場の悪い斜面を行ったり来たりすることが多いので、グリップがよい靴というのはクルマのタイヤの選択並に重要だと思っている。

この靴はまるでスワンパーみたいなパターンをしてたので泥の斜面などにもよく食いついてくれましたし、靴の裏が薄く柔かいので、岩場などでも柔軟にフィットしてくれて非常に便利でした。

欠点としてはなかなか売っているのを見かけないこと。

現在は、普通の靴しか持ってないのでまた似たような靴が欲しいと思ってます。


・・・いかがでしたでしょうか。

セルフレスキューがある程度出来るようになれば、「一緒に来ている人が走ってくれるのを待とう」とか、「走る人がいないと走りに行かないよ」なんて言わずとも、自分のペースでクロカンの実稼働時間や経験値を貯めることが非常にカンタンに出来るようになる。

人それぞれの楽しみ方があるので、全ての人にこれを押し付けるわけではないのだが、僕はこんな方法で人より多く走り込みをしてきたし、ウインチングやセルフレスキューの経験値を積んできたと思っています。



ただ、今の四駆のクロカンのシーンでは、明らかに自走だけとか、自走中心の人が99%で、自分のように積極的に引っ張ろうだとか、「ハマるかも?」というところに臆せず突っ込んでいくタイプは(特に自分の周りでは)極めて少数派になると思っている。

先日も言ったとおり、ランクル60系・70系や80系、サファリなどという重量級のクロカン車はこれらレスキュー用品を大量に積んでの汎用的な(牽引を前提とした)クロカンが非常に得意だし、僕としてはその特徴を使わないのはもったいないと思っている。

また、JEEPやジムニーのように比較的軽量なクルマの場合も、ここまで重いウインチや牽引用具満載にしなくても、それら用品を厳選して載せておくことで、比較的安全な単独行が可能になると思っているし、

それらを載せておくことで、自走の幅や遊びの幅も飛躍的に増えていくと思っている。


■ハンドルロックも使えるようになっておこう

案外というか、クロカンの上級者でも牽引の方をさっぱりしない人は知らないことが多い技として、「ハンドルロックを使った牽引術」があります。

このハンドルロックの技は、単独行をする場合は必需となる技なのでぜひ知っておいてください。

まず、ハンドルロックとは、イグニッションキーを抜いた状態で、ハンドルが回らないようロックして盗難を防止するための機構の事です。

ですのでこの機構は全てのクルマについていて、これが壊れているクルマは車検で通らないはずですね。


単独行になると、クルマから降りて外からクルマを引くということが当然多くなるのですが、クルマを外で引く場合、何もしてないと勝手にハンドルがくるくる周り、タイヤの向きがあらぬ方向を向いてしまい、思わぬ方向にクルマが移動してしまうことがよくあります。

そこで、ハンドルロックの仕組みを使い、タイヤの向きを固定したいところに合わせた後でエンジンを切り、イグニッションキーを抜いてハンドルを左右に少しこじれば、「ガチッ」とロックが入り、それ以上ハンドルが回らなくなります。

先日はこの時にハンドルロックを使い、安全にクルマから降りています。



今回の場合、溝に落ちているタイヤが荷重がかかっていてもこれ以上、どちらかにハンドルが廻ってしまうということはないので、ぶっちゃけハンドルロックを使う必要はなかったのですが、

まぁ、牽引初心者がやっているということもありますし、基本に忠実なセルフレスキューを覚えましょうという初心者講習会の主旨にも合致している(笑)ということもあるので、安全策のため、ハンドルロックを使わせているって感じでしたね。




本当にハンドルロックが必要なのはこういう状況などですね。

これは、傾斜70度ほどで高低差が5m?ほどある斜面をチルホールで下ろしている画像ですが、

この場合などではチルで下ろしている最中にハンドルがあらぬ方向をむいてしまうことは非常によくあります。

ですので、チルダウンする前にエンジンを切って、キーを抜き、ハンドルがロックされていることを確認して、チルでゆっくり下ろしていくわけです。



これは余談ですが、クロカン初心者の中で、斜面の途中で止まってしまい、クルマから降りて地形を確認したりする場合に、エンジンをつけっぱなしでサイドブレーキだけの拘束力で平気でクルマから離れる人がいますが、

軽量級のクルマならいざ知らず、重量級のクルマでそれをしてしまうと非常に危険なので、面倒でも一旦エンジンを切り、クルマから離れるようにしたほうがいいと思います。

ただ、これが出来ないクルマもありますね。

SJ30など、キャブレター仕様のガソリンエンジン車などは、傾いている最中にエンジンを停めてしまうと、再始動できなかったり、なかなかエンジンが掛からない場合もあるので、そこは臨機応変に対応すればいいと思います。

(軽量車の場合、かなりの斜面で停止していてもサイドブレーキだけで十分停車出来ることもありますね)


■草食系四駆乗り?

自分らがクロカンを始めた頃は、クロカンという趣味が持つ開拓精神だったり、チャレンジャー精神みたいなものもあるのかもしれませんが、目がギラギラしている肉食系の四駆乗りがもっと多かったように思いますネ。

ですが、「マナーがなってない」とか、「飲酒運転など平気でしてしまう」というようなコンプライアンス(法令遵守)の問題、クロカンの現場での危険行為を 平気でする、クロカンの現場で起こる事故の問題など、問題が全くなかったですよとか、昔がよかったネと言うつもりはサラサラないのですが、

なんか最近の若い子を見ていて、僕らが20代の頃、ギラギラしてクロカンをしていたあの”熱量”をあまり感じないんですよね。

まぁ、うちのJr.は母親の腹の中にいる当時からランクル60でクロカンの現場に連れ出しているのでちょっと違うのですが、



「これも競争させることを過度に控えさせてきたゆとり世代の弊害なんだろうか?」って思うことも最近は増えてきました。

クロカンなんて”失敗してナンボ”みたいなところもあるし、僕も随分とアレコレやらかしてきたし、そういう経験があるので今、やっとそこそこ使えるように なっていると思うので、もっと失敗を恐れず、たまには「単独でガンガン行ってくれる」ようになっていってもらいたいと思います。